空を見ながら「おいでよ」と言われて、おずおずと私も隣に寝転んだ。
見上げた空には数えきれないほどの星が輝いている。
「すごい」
そんなありきたりな言葉しか出てこないほど星の輝きは眩しく、私は息を呑んだ。

「嫌なことがあった時、よくここに来てたんだ。一人になりたくて」

夏樹さんの言葉に耳を傾けながら、失くしかけていた何かを取り戻すみたいにこの静寂にまた胸を締め付けられる。私、忘れてたんだ。

「最近、全然空を見れてなかった・・・」

大好きだったはずなのに。いつからだろう、こんなに大切なことを忘れていたのは。

「心に余裕がないと忘れちゃうこともあるよね。きっと姉さんに電話してくるくらい白沢さんの心は限界だったんじゃないのかな」

そうなのかもしれない。

「ここには俺しかいないから、全部吐き出していいんだよ。そのために連れてきたんだから」

「何かあった?」その言葉に我慢していた気持ちがぷつりと切れた気がした。もう自分では止められないくらいに。
溜め込んでいたものを吐き出す言葉は決してキレイなものじゃなくて、それでも夏樹さんは黙ったまま聴いていてくれた。

返事があるわけじゃない。それでもいつの間にか繋がれた手のぬくもりがちゃんと聴いてるよと教えてくれてるみたいで、私は全部を吐き出した。

仕事に行くのが辛い。親にも言えない。だって心配させるってわかってるから。
だから、解決したいわけじゃない。ただ誰かに聴いてほしくて。

そんな気持ちも、全部。全部。