数分後、自宅の近くまで来るとタクシー運転手さんを案内して家の前につけてもらった
支払いを済ませて咲妃乃に声をかけるが、彼女は完全に夢の中
仕方ない…3階までおぶるしかないか…
タクシーを降り、咲妃乃を背中に乗せる
華奢なのに寝ている人というのは不思議と重たく感じる
片手にはバッグも持ち、酔っ払いには大変な状況だった
初めてエレベーター付のマンションに住むんだった…と心から思った
3階までの階段は29という若さでも辛いものがあった
「やっとついた…っ」
何とかフラつきながらも着いた自分の部屋
だいぶ涼しい季節になっていたはずなのに身体は暑くなっていた
「う、んー…」
咲妃乃を自分のベッドへと寝かせる
静かな寝息を立てたまま、心地良さそうに瞳を閉じている
今日はソファーで寝るしかないか…
流石に仲のいい同期と言えど、彼女でもない同期と一緒に寝ることはできない
まさか女の人を家にあげることになるとは思っていなくて部屋は少し汚れている
タバコや食べ物の匂いのついたスーツを脱ぎ、部屋着に着替えようと取りに行くと、ベッドで眠っている咲妃乃に目がいった
まさかいつも飲み会でこうやって潰れてるんじゃないだろうな…と咲妃乃の寝顔を見ながら思う
今まで咲妃乃が男との噂は聞かなかったが、顔の整った女を男が放っておくわけがない
たしかに社内で生活をしていると咲妃乃が通ると男性社員の視線は彼女へと向かう
男には困らないだろうな、と思っていたが今日話に聞くと特定の男はいないらしい
恋愛する時間がないのか、恋愛に興味がないのか…
人それぞれではあるけれど不思議でたまらなかった
幸せそうに眠る咲妃乃を見ると自然の口角が上がっていたことに気がついた
子供みてぇだなあ…
寝顔を見ていると自然と彼女の頭を優しく撫でていた
いろいろと考えていると睡魔に襲われて、自分でも気づかないうちにそのまま眠りについていた

