アイツはいつも俺の名前を呼ぶ。

「凌牙、お願い!」

「無理だって」

「凌牙に会わないと、
安心出来ない!」

「そっちに行ったら、
講義に間に合わないだろっ!」

「ちょっと遅刻するだけじゃない」

明日、薫の英語スピーチコンクールがある。
その前に会場まで顔を見せろ、とさっきからしつこい。

「バイクですぐじゃない!」

「だから、明日の講義必修科目なんだって。留年したらどうすんだよ?」

「私、明日の為に死ぬほど練習したのに!」

「それはわかってるよ」

「じゃあ…「無理」」

さっきからこの繰り返し。