前にもこんなことがあったとき、光太郎が逃げてた理由は。



『光太郎、あんたまた朝練サボったの?』



そのお怒りから逃げてたときくらいだ。



『俺が朝がダメなこと、芽衣ならわかるだろ!』



『あたしは知ってても、それは言い訳にしかならないからね』



『とにかく、ないの?』



『ないし。怒られてきな』




にこやかなスマイルで、櫻井先輩がきたところに光太郎を差し出した。


『先輩、お探しの光太郎ですよ』


その瞬間がっちりと光太郎を取り押さえた先輩。


さすが円盤やってるだけある。


走ってるだけの光太郎は素直に負けを認めてた。



『あ、園谷(そのたに)さんだっけ?園谷芽衣さん』



『はい、覚えていただけて光栄です。いつもお世話になってます』



『母親みたいにいうんじゃねえよ!』



光太郎の怒号が聞こえた気もしないでもないけど、そこはあえての無視。



『ご協力感謝します』



『いえいえ、たっぷり叱ってやってください』



『う、裏切り者ー!』



ズルズルと引きずられる光太郎を笑顔で見送った。



裏切り者でもなんでもいい。



叱られて来い、光太郎君。