この街も、ずいぶん変わっちまったな…


俺の名前は柊 遥斗(ひいらぎ はると)


小さい頃はこの街に住んでいたが、ワケあって引越し。そして高校生になった今、はるばる帰ってきた。


なんで戻ってきたか。それは誰かとの約束を果たすため。誰と、何の約束をしたかなんて全く覚えてない。


だけど、忘れちゃいけない。そんな気がしたんだ。


8歳から17歳の間で、知らない建物だらけになっている。


今は学生は夏休み。賑やかな子供たち、ませてる中高生。今日も仕事のサラリーマン。


なんだかとても、騒がしい


見知らぬショッピングセンター


初めてみる道路


ワンチャン間違えたか?ともう一度地図を見る


スマホをみていると背後から声が聞こえた




「え!?も、もしかして…はるちゃん!?」


目の前に現れたのは麦わら帽子を被った白いワンピースのいかにも夏が好きそうな女の子

髪はショートカットで、大きな目をぱちくりさせている。


「えっと…うん。柊 遥斗、です」


「はるちゃんいつからこの街に帰ってきてたの!?ていうか私のこと覚えてる!?」


俺は頭の中をフル回転させた。おそらく小学校のときのクラスメイトだろう。


「…小夏、か?」


「うん!うん!!そう!小夏だよ!相川小夏!隣の席だったの、覚えてない?」



隣の席…?そこまでは覚えてないな。
でも、小夏のことはよく覚えている。今この瞬間と変わらない、明るくて人当たりがいい、みんなに好かれている奴だった。



「すまん、そこまでは。でもお前のことは覚えてる」


「覚えてないかーそっかー。ま、いいや!はるちゃんはここにまた引越してきたってこと?」


「あぁ、そうだよ」


「へー…んと、さ。暑いし、立ち話もあれだから時間があるならどこか行こうか?」



引越し早々女の子と…そこそこに緊張するな

ーーーー
「へー、じゃあ前の家と近いところに住むんだ!」


俺たちは近くのカフェに入った。もちろん俺がいたころはこんなオシャレなカフェなんてなかった。


よくわからないので、とりあえずアイスティー。
小夏は夏みかんパフェを食べている


「高校はどこに行くの?」


「あぁ、春日野高校に行く」


「…え!!一緒じゃん!!」


小夏は本当に変わらない。表情がころころ変わるところも、クリームがついていても気づかないところも。


「そうか…じゃあこれから世話になるわ」


「任せてよ!私、はるちゃんに友達ができるように協力してあげる!」


「余計なお世話…」


「だってはるちゃん、昔から友達少ないじゃん?」



こいつはいらんことまで覚えてるんだな…
記憶力どうなってんだ。



「小夏さ、俺のことはるちゃんって呼んでるけど…そんなに俺たち親しかったっけ」


「えっだって隣の席だったんだから仲良しさんだったよ?はるちゃんだって私のこと'こなちゃん'って呼んでたじゃん」



そこまでだったのか、俺。恐ろしい。



「ねーね、またこなちゃんって呼んでよっ」


「は?嫌に決まってんだろ」


そんなこんなで、2時間ほど小夏と話して、新しい家の場所を教えた。


明日からの学校、朝迎えに来てくれるらしい。お節介だが、迷子になるよりはだいぶマシだ。

「じゃ、はるちゃん、明日ちゃんと起きれるようにしとくんだぞ!」


「おぅよ。あ、小夏。」


「ん?」


「言うの忘れてた。クリーム、ずっとついてるぞ。」



「……そーゆーのはもっと早く言ってよ!!!」








ーーーーーピリリリ、ピリリリリーー。
ついにきたか…朝が。

俺は朝が嫌いだ。好きなやつなんていないと思っている。仮にいるとしたらそいつが太陽だ。


「小夏が来る前に、支度しなきゃか」


俺はあまり感情的な人間ではないが、転校初日はやっぱり緊張する。


新しい制服に袖を通したとき、謎の緊張で目が回るかと思った。


ピンポーン



鳴り響くインターホン。早すぎだろ。


ピンポーンピンポーン



騒がしいやつだ。性格出過ぎだろ


ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン


「だァァァ!わかったわかった!今開けるから!」


「おっはよーはるちゃん♪ってまだ支度出来てないのー!?」


「お前が早すぎるんだよ…ま、暑いし、狭いけどとりあえず入れば」


「ありがと!おっじゃましまーす!」


俺はとりあえず、冷房の効いた部屋に小夏を連れていき、速攻で支度を始めた



「なんか…一人暮らしの男の子の部屋に来るなんて初めて!ドキドキしちゃうかもー!」


「何言ってんだよ…」


最近の女子高生は危機感ってものがないのか。俺でよかったものの…

一通りの支度を済ませて、小夏のところに戻った


「お待たせしました」


「うんっ行こう行こう!」


俺にとっては眩しすぎるくらいに明るい小夏。こいつはきっとモテるな。絶対。


春日野高校。か…。不安だが、まだ、まだ小夏がいてくれるのはありがたい


「はるちゃん、部活はどこに入るの?」


「全然決めてないけど、入るんだったら楽なのがいいな」


「そーかそーか、じゃあさ、文学部はいろうよ。私も入ってるんだけどむしろ幽霊部員しかいない感じ!」


「へぇ…それはいいな」



夏の終わり。俺は、約束の子に出会えるのだろうか。