そろそろ起きてくれないとつまらないよ。
…またテストの時に猛勉強しなきゃいけなくなるぞ。
…なあ、李那。
お前のいない教室も、もう見慣れてきちゃったぞ。
早く戻ってこいよ。
【更科蒼空side END】
【如月李那side】
…ずっと暗闇を歩いていた。
何も無いこの暗闇の世界。
いつまでここにいなければならないんだろうか。
お姉ちゃんもいなくなっちゃった今、寂しくて仕方ないよ。
…ねぇ、裕くん。助けてよ。
いい加減ここから出たいよ。
「…裕くん…」
…悲しいよ。
ー李那…
私は強く目を閉じた。
どうせなら暗闇が見えなくなればいいんだから。
「…り…李那…」
…?
声が、聞こえる?
あれ?なんで?
「…李那?」
…裕くんの優しい声…
「…ひ…ろ…くん…」
「李那!」
声の主はやっぱり裕くんだ。
…戻ってこれたんだ、私…
良かった、もう戻れないかと思ってた…
「李那!目覚めたんだな!」
…裕くん、髪伸びた…
「…あれ、前髪伸びてる…」
私の顔の前に垂れてきた前髪。
…こんなに長かったっけ…?
「…お前、意識なくしてあれから3ヶ月経ってたんだぞ?」
…え?
待って、聞き間違い?
「…3ヶ月…?」
「そう、眠り続けて3ヶ月。」
…つまり今は…
「1月。」
うわあ…
「…良かったな、2年で。」
…ほんとだよね…
裕くんは優しく笑った後、病室から出ていってしまった。
…それにしても3ヶ月か…
どんだけ寝てたの私…
「…久しぶり、に起きた気がする…」
…あの裕くんの声も、久しぶりだ。
どこか安心するような、そんな声。
「如月さん、おはよう。」
「おはよう、先生!」
うわあ、先生もだいぶ老けたよねぇ
「「李那!」」
「お姉ちゃん!」
…おお、私の家族か。
変わりすぎててわかんなかったよ。
いやあそれにしてもみんな老けたねえ。
「おはようみんな!」
「お姉ちゃん…起きるの遅いよ!!心配したんだからね!」
「ごめん、おはよう、美那」
美那も背が伸びたね…
完全に抜かれたわ…
「お姉ちゃんの馬鹿ああ!!」
「ごめんね、美那。」
…それにしても前髪伸びすぎでしょ。
そろそろ後ろの髪の毛と同じくらいになりそうだ。
「…うん、特に異常はないね。
家帰る?」
帰れるのかな?
「帰ってもいいの?」
「心拍数も特に異常は見当たらないからね。」
…久しぶりに家に帰れる…
「帰りたい。美那やお父さん、お母さんの居るおうちに。」
…遺影のお姉ちゃんにも。
ちゃんとお礼を言いたい。
「よし、なら帰ってもいいよ。」
やったね!
我が家我が家!
【如月李那side END】
【中谷裕side】
「…え?」
美那ちゃんに如月家に招待された俺。
リビングに入ってびっくりした。
病院にいるはずの李那がいるんだもん。
「なんで、李那が…」
「えへへ
退院してきました♪」
李那がピースしてソファに座ってる。
李那の大好きなシュークリーム買ってきてよかった…
クリームつけながら食べるの見てるのかなり面白いから…
「あっ!シュークリームだ!」
「あ、うん、買ってきた。」
李那が満面の笑顔で俺を見上げる。
…良かった。ほんとに。
退院出来て…
「裕くん。毎日来てくれてたんだよね。
ありがと。」
「当たり前だろ…」
まさかもう退院してきたとは思わなかったし、何より嬉しさの方が勝ってるよ…
大好きな李那の笑顔が見れるだけで満足だよ、俺は。
李那…
大好きな人の大好きな笑顔。
こんなに近くで見られることが出来て俺は幸せものだ。
…浮かれていると、直ぐに壊れてしまいそうだからあんまり浮かれたくない。
李那をまだ、失いたくない。
大切な人だから。
「ねえ、李那。」
「なあに、裕くん。」
……
言えない。
今は李那が1番に考えないと。
「…?」
李那は不思議そうに俺を見る。
李那の体は今、繊細な状態なんだ。
俺の望みで李那の体を害するわけには行かない。
「ごめん、李那、なんでもない。
…ほら、クリームついてるよ。」
「わ、ほんとだ。ありがとう、裕くん。」
にこーって。
笑ってくれてる。
この笑顔を壊すわけにはいかない。
「…裕くん。私疲れちゃった。
部屋までお願いしていい?」
李那はタオルで手を拭きながら俺を見上げる。
その足は今、動かないのだろう。
聞かなくてもわかる。
今、李那の足は動いてない。
「いいよ。運ぶからね。」
「うん。いつもはお父さんにやって貰ったり美那にやってもらったりしてるんだあ。」
美那ちゃんも力持ちになったからなあ。
そのうち李那の身長まで抜かしてしまいそうだ。
「…よっ…と…」
俺は李那をベットに下ろすと車椅子を取りに行こうともう一度出ようとした。
ーキュ…
…ん?
後ろに何か引っかかった気がして振り返ると李那が俺の服の裾を掴んでいた。
「李那?」
「そばにいてよ。」
俺は李那の拗ねた顔に負けて李那の隣に腰を下ろした。
「車椅子のことならいい。
動けるようになったら下に行くから。」
…李那はいつもこんな症状と戦っているのか…
見てて辛くなってくる。
「…なあ、李那。」
「なあに、裕くん。」
…またテストの時に猛勉強しなきゃいけなくなるぞ。
…なあ、李那。
お前のいない教室も、もう見慣れてきちゃったぞ。
早く戻ってこいよ。
【更科蒼空side END】
【如月李那side】
…ずっと暗闇を歩いていた。
何も無いこの暗闇の世界。
いつまでここにいなければならないんだろうか。
お姉ちゃんもいなくなっちゃった今、寂しくて仕方ないよ。
…ねぇ、裕くん。助けてよ。
いい加減ここから出たいよ。
「…裕くん…」
…悲しいよ。
ー李那…
私は強く目を閉じた。
どうせなら暗闇が見えなくなればいいんだから。
「…り…李那…」
…?
声が、聞こえる?
あれ?なんで?
「…李那?」
…裕くんの優しい声…
「…ひ…ろ…くん…」
「李那!」
声の主はやっぱり裕くんだ。
…戻ってこれたんだ、私…
良かった、もう戻れないかと思ってた…
「李那!目覚めたんだな!」
…裕くん、髪伸びた…
「…あれ、前髪伸びてる…」
私の顔の前に垂れてきた前髪。
…こんなに長かったっけ…?
「…お前、意識なくしてあれから3ヶ月経ってたんだぞ?」
…え?
待って、聞き間違い?
「…3ヶ月…?」
「そう、眠り続けて3ヶ月。」
…つまり今は…
「1月。」
うわあ…
「…良かったな、2年で。」
…ほんとだよね…
裕くんは優しく笑った後、病室から出ていってしまった。
…それにしても3ヶ月か…
どんだけ寝てたの私…
「…久しぶり、に起きた気がする…」
…あの裕くんの声も、久しぶりだ。
どこか安心するような、そんな声。
「如月さん、おはよう。」
「おはよう、先生!」
うわあ、先生もだいぶ老けたよねぇ
「「李那!」」
「お姉ちゃん!」
…おお、私の家族か。
変わりすぎててわかんなかったよ。
いやあそれにしてもみんな老けたねえ。
「おはようみんな!」
「お姉ちゃん…起きるの遅いよ!!心配したんだからね!」
「ごめん、おはよう、美那」
美那も背が伸びたね…
完全に抜かれたわ…
「お姉ちゃんの馬鹿ああ!!」
「ごめんね、美那。」
…それにしても前髪伸びすぎでしょ。
そろそろ後ろの髪の毛と同じくらいになりそうだ。
「…うん、特に異常はないね。
家帰る?」
帰れるのかな?
「帰ってもいいの?」
「心拍数も特に異常は見当たらないからね。」
…久しぶりに家に帰れる…
「帰りたい。美那やお父さん、お母さんの居るおうちに。」
…遺影のお姉ちゃんにも。
ちゃんとお礼を言いたい。
「よし、なら帰ってもいいよ。」
やったね!
我が家我が家!
【如月李那side END】
【中谷裕side】
「…え?」
美那ちゃんに如月家に招待された俺。
リビングに入ってびっくりした。
病院にいるはずの李那がいるんだもん。
「なんで、李那が…」
「えへへ
退院してきました♪」
李那がピースしてソファに座ってる。
李那の大好きなシュークリーム買ってきてよかった…
クリームつけながら食べるの見てるのかなり面白いから…
「あっ!シュークリームだ!」
「あ、うん、買ってきた。」
李那が満面の笑顔で俺を見上げる。
…良かった。ほんとに。
退院出来て…
「裕くん。毎日来てくれてたんだよね。
ありがと。」
「当たり前だろ…」
まさかもう退院してきたとは思わなかったし、何より嬉しさの方が勝ってるよ…
大好きな李那の笑顔が見れるだけで満足だよ、俺は。
李那…
大好きな人の大好きな笑顔。
こんなに近くで見られることが出来て俺は幸せものだ。
…浮かれていると、直ぐに壊れてしまいそうだからあんまり浮かれたくない。
李那をまだ、失いたくない。
大切な人だから。
「ねえ、李那。」
「なあに、裕くん。」
……
言えない。
今は李那が1番に考えないと。
「…?」
李那は不思議そうに俺を見る。
李那の体は今、繊細な状態なんだ。
俺の望みで李那の体を害するわけには行かない。
「ごめん、李那、なんでもない。
…ほら、クリームついてるよ。」
「わ、ほんとだ。ありがとう、裕くん。」
にこーって。
笑ってくれてる。
この笑顔を壊すわけにはいかない。
「…裕くん。私疲れちゃった。
部屋までお願いしていい?」
李那はタオルで手を拭きながら俺を見上げる。
その足は今、動かないのだろう。
聞かなくてもわかる。
今、李那の足は動いてない。
「いいよ。運ぶからね。」
「うん。いつもはお父さんにやって貰ったり美那にやってもらったりしてるんだあ。」
美那ちゃんも力持ちになったからなあ。
そのうち李那の身長まで抜かしてしまいそうだ。
「…よっ…と…」
俺は李那をベットに下ろすと車椅子を取りに行こうともう一度出ようとした。
ーキュ…
…ん?
後ろに何か引っかかった気がして振り返ると李那が俺の服の裾を掴んでいた。
「李那?」
「そばにいてよ。」
俺は李那の拗ねた顔に負けて李那の隣に腰を下ろした。
「車椅子のことならいい。
動けるようになったら下に行くから。」
…李那はいつもこんな症状と戦っているのか…
見てて辛くなってくる。
「…なあ、李那。」
「なあに、裕くん。」



