「わかったよう…消すよう…」
…人に消さしといて俺はあるんだよな。
李那がストライク出して喜んでる動画。
「あ、次私だ!」
李那は杖をついて立ち上がりそろりと杖を離す。
足はプルプルしているが立っている。
「よし、投げる!」
「おー。」
李那はレーンに向かって思いっきりボールを投げる。
「あのさー、裕くん。」
「うん?」
「クリスマス、一緒に過ごせないかも。」
…クリスマス…か…
「そっか。」
「ごめんね。」
「いいよ。大丈夫。」
俺は李那の事、何もわかっていなかった。
この時の彼女がどんなことを思っていたのか。
どんな思いでこんなことを言ったのか。
俺には何も分からなかったんだ。
【中矢裕side END】

【更科蒼空side】
「…ふぁーあ…」
普通の平日。
普通の日。
いつも通り目覚めた俺はいつも通り準備を始める。
何となく携帯を開いてみた。
…やっぱり李那からの連絡は、ない。
最近こういうことが多い。
連絡が取れない時があるんだ。
「…蒼空?起きてる?」
「起きてるよ。」
俺は朝ごはんを食べずにそのまま学校に向かった。
少し、李那が心配だ。
「おはよ、蒼空。」
「よう、海澪」
「…」
「と、柊くん」
俺が声をかけると嬉しそうに笑顔になる柊くん。
「俺のことは秀一って呼んでくれていいんだよ?アリスちゃん!」
…いい加減そのアリス呼びやめていただきたい…
そろそろ本格的に恥ずかしくなってくるから…
いつも通り、3人で並んで歩く。
「あっ、裕さん、おはようございます」
「おはよ、みんな。」
…また、李那がいない。
裕さんはいつもと同様の時間に来るんだけど、最近李那が一緒じゃない。
「…あの、李那は…」
「あいつ、今日は車で行ってるよ。」
…足うごかないのか…?

「お、みんな、おはよう!」
…めちゃくちゃ元気じゃないか。
「心配した。」
「ごめんよ〜
左足が動かんくなったんだわ。」
ケラケラ笑う李那だけど、悲しそうな笑いだった。
「…」
「なんで黙るの?!」
李那が素っ頓狂な声を上げている。
今、俺と海澪には李那の気持ち…本音が痛いほど分かる。
「…」
「…蒼空?…海澪?」
李那は今、俺達より悲しいはずだ。
「…あのね、今日私、みんなにこの病気のこと、言うんだ。
全校集会のとき。」
…俺は驚きを隠せなかった。
だって、今まで知られたくなくて隠し通してきた秘密を暴露するっていうんだから…
それくらい、思いつめているんだな、李那…
俺も海澪も裕さんも、李那の本音は痛いほどわかる。
…もう走れなくなったんだ。
まだ走りたいはずなのに…
「…そんな顔しないで。」
李那が俺の顔を拭く。