「…いつ、目が覚めたんだ?」
「さっき?」
裕さんの質問にあっけらかんとした表情で答える李那。
「…なんにせよ、目覚めてよかった…」
「…なんだよ、戻ってきたのかよ、如月サン」
声がした方を振り向くと吉野高校の柊さんが来ていた。
「良かったよ、目覚めてくれて、俺のライバルさん♪」
「目覚めて速攻あんたの顔を見るとは思わなかったよ♪」
2人のあいだに火花が散っているのが見える。
…こええ…
「…はあ…これ、お見舞い」
「えっ、みかんジュースにみかんゼリー!!」
…安定にみかん好きだな…
「さて、聞かせてもらおうか、お前、なんの病気なんだ?」
李那の前に仁王立ちして李那を見下す柊くん。
…そんな言い方すると李那が怒るよ…
「ん?あれ?聞いてないの?」
みかんゼリーを頬張りながら李那はキョトンとする。
「てっきり海澪がもう喋ったかと思ってたんだけど。」
「私そんなに口軽くないよ?!」
海澪…
今にも泣きそうな顔してる…
「んー…じゃ、蒼空、喋っといて。」
「え?」
…俺?
なんで俺…
「あ、アリスじゃん!」
…もう忘れてくれよ…
「じゃあ、こっちきて。」
俺は柊くんを連れて屋上に向かった。
風が気持ちいいから。
【更科蒼空side END】

【如月李那side】
「李那。」
隣を見れば大好きな裕くん。
周りを見れば心配してくれる大事な友達。
…良かった、まだ生きてるんだ、私。
「「李那!!!」」
「お姉ちゃん!」
…うわお、お母さん達老けたね〜
「白髪いっぱい」
「「李那ああああ!」」
「ぐえっ…」
お母さんとお父さんが同時に飛びついてきた。
…のはいいけど、苦しい…
「李那、李那…よかった…そのまま死んじゃうのかと…」
「…」
私自身死ぬかと思ったよね〜…
お母さん達の圧力で。
…とまあ冗談は置いといて…
「まだ生きてるよ。やりたいことも沢山ある。」
私はお母さん達の顔をしっかり見る。
…眠ってるあいだ、声は聞こえてたんだ。
体が動かないだけで。
…お姉ちゃんと夢の中で会った。
まだこっちに来てはいけない、早く戻りなさいってお姉ちゃんの指さす方に歩いてた。
ずっと暗闇だったんだけど、だんだん明るくなってきて。
目を開けたら裕くんの顔が見えたんだ。
「…お姉ちゃんが助けてくれたの。」
…そう思う。
あの時なんでお姉ちゃんが出てきたのか、理由は分からないけど、きっと助けてくれたんだ。
あのまま歩いていたら死んでたと思う。
お姉ちゃんが私を止めてくれなかったらと思うとゾッとする。