放課後、俺は裕さんを訪ねてみた。
「裕さん、どうも。」
「…ああ、蒼空か。
どうした?」
「今日、李那いないなっと思いまして。」
「…」
裕さんは笑顔のまま固まる。
「…?」
「あ、いや、李那は、今日…」
しどろもどろ。
何かあったのか?李那…
「裕くん!何かあったの?!」
「ちょ、海澪ちゃん…近い近い…」
裕さんは明らかに李那のことを知ってる。
この人は嘘をつくことが苦手だと思う。
わかりやすい、と言うべきか。
「まあ、いいか、じゃあ、俺のあとを着いておいで。」
「「え?」」
「ついてこれば分かるよ。」

裕さんについて行ってたどり着いた先は病院。
やっぱりここに李那が…?
事故なのか?
ーコンコン…
「どうぞ。」
…女の人の声。
李那に似てるけど、李那じゃない。
「おばさん、こんにちは。」
「裕くん、来てくれたんだ。」
中にいたのは李那のお母さんと李那。
だけどその李那は俺らを見ていない。
その目は閉じられていた。
「蒼空くんと海澪ちゃんもいらっしゃい。」
「「こんにちは…」」
「2人とも、聞きたいことは分かるから先に言うわね。
李那は昨日息が出来なくなって倒れたの。
そこから緊急搬送されて今に至るわ。」
…息が?
出来なくなった?
…今の李那は酸素マスクを付けられている。
…忘れてたんだ。
心の底で否定したかったんだ。
李那が本当は病気じゃないんだって。
だけど、今、現実を見ると、やっぱり李那は病気で。
改めて現実を思い知らされた。
【更科蒼空side END】

【如月李那side】
…真っ暗。
声は何となく聞こえているのに自分の体が動かない。
喋りたいのに喋れない。
裕くんの声もお母さんの声も、海澪や蒼空の声も聞こえているのに、自分の体が言うことを聞かない。
息苦しいのは無くなったけど、暗闇は無くならない。
…誰か、ここから出して。
暗いのは得意だけど、ずっといたくない。
ここにいればいるほど出られなくなりそうで怖い。
…誰かが私の手を握ってる。
少しでもいいから体、動かないかな。
この手、誰だろう。
お母さんじゃない。
お母さんの手はもっと冷たいもの。
この暖かい手。知ってる。
この手は多分裕くんだ。
…なんで動かないんだろう。
私は何故か後ろを振り返る。
でもやっぱり暗闇で。
真っ暗な世界に私だけいる。
何も音もない私しかいない世界。
裕くん…助けてよ…
誰でもいい、ここから出してよ…