「李那、はい。」
扉を開けて渡してくれたお母さん。
「ありがと、お母さん。」
…握りたこが出来てるからすごい痛い。
「…よっ…と…」
「車椅子持ってくるね。」
「…ありがと…」
本当は乗りたくない。
だけど立った状態のまま、歩くことが出来ない。
今、バランスをとるので精一杯だ。
「…はいっ」
「ありがと。」
「水臭いわね。言いなさいよ。」
…ごめんね、お母さん…
「うん、ありがと、お母さん」
「お姉ちゃん出た?次入るね!」
美那はいつもと変わらずトタトタと脱衣所に向かって走っていく。
「…あ、動くようになった。」
「そう?」
私はリビングで車椅子からそろりと降りた。
「うん、大丈夫。」
「良かったわね。」
「ごめんね、持ってきてくれたのに。」
「いいのよ。」
お母さんは笑顔で車椅子を端におきに行ってくれた。
「美那が出てきたら衣装きてみるね〜」
「あら楽しみ!」
カバンから衣装を取り出す。
「出たよ〜!もう衣装着てきた!」
「え?はやっ!」
美那は既に小悪魔の衣装を着ていた。
「私も着替えた!」
「あら2人とも、可愛いわよ!はい、チーズ」
「「いえーい!!」」
美那と私でお母さんに向かって満面の笑顔。
「李那、可愛いわよ。」
「ありがと!ねね、コレ見て。」
私は携帯を持ってお母さんのそばへ。
「あら、アリスじゃない。可愛いわね。」
「これ、蒼空だよ!」
「ぇぇえ?!」
お母さんは蒼空とも面識がある。
だからびっくりしたんだろう。
「蒼空くん?!
すごい美少女じゃない!」
「でしょ?!」
美那も写メを見て爆笑してる。
…来年も、また、あの花火見れたらいいな。
裕くんやみんなと一緒に。
【如月李那side END】

【古川海澪side】
「秀一、今日楽しかった?」
「うん、海澪の可愛い赤ずきんも見れたし。」
「…それは忘れて…」
李那達と別れてからは私と秀一で近くの喫茶店に入ってお茶をしていた。
「如月さん、さ。」
「李那?」
「うん、あの子、何か病気か何か持ってる?」
…病気のことは私と蒼空と裕くんしか知らないはず。
陸上を辞めたのは肩の脱臼を理由にしたと言ってたし…
「あの大会の時さ、なんか違和感感じたんだよね。2年間とも。」
何となく察してたんだ、秀一も。
「1年前は倒れてるし、今年はなんか本気ではなさそうだったし…」
「…」
…病気のことは言ってはダメな気がする。
そういうのは李那からじゃないと…
「…李那から、聞かないとわかんないんじゃない?」
私からじゃダメなの。
「…また聞いてみることにするよ。」
…教えてくれるかは分からないけどね。
李那は吉野高校を嫌っているから。
「…さて、これからどうする?
海澪、帰るなら送るよ?」
腕時計を見ると7時半。
まあ、帰ってもすることないけどな…
「秀一、これから予定あるの?」
「俺?別にないよ。
風呂はいって寝るだけ。」
「私もそんな感じかなあ」
私と秀一は特に何もせずそのまま別れてそれぞれ帰路に着いた。
【古川海澪sideEND】

【更科蒼空side】
…楽しかったなあ…
学校が楽しいと思えるのはやっぱり李那のおかげだ。
友達がいない訳では無い。
「…そういや誰かから連絡来てるのかな…」
携帯のLINEをたちあげる。
「…李那から…?」
1番上に最新。
李那からの写メが届いていた。
気になって開けてみると俺のアリスの写真。
…あの野郎…