何もしたくないような、そんな顔。
「…なんでわかったの?」
「…」
「私の偽笑顔のこと。」
なんでって言われて即答出来るやついるのかな…
もちろん俺の中では即答できる答えはある。
“李那が好きだから”
好きだからずっと見ていたくなるんだ。
見てたら分かる。
今、李那は無理をしているってこと。
「…李那と出会う前の俺もそうだったから。」
…李那と出会う前の俺も周りに合わせて笑ってただけで本当の笑顔なんて出したことない。
でもそれは李那に会って変わった。
1年で同じクラスになって、1人でいた俺に話しかけてきた席の近い女の子。
くだらない事でも俺を笑わそうと面白いことを唐突に言い始める馬鹿みたいな子。
それが李那だった。
「…李那が俺を変えてくれたんだ。覚えてるか?」
「うん。いつもつまんなさそうにしてたアホだよね。」
…何故かアホ呼ばわりされてるけどさ…
「私の中でそういうのは許せなかったんだけど、いつの間にか自分がそうなってたんだよね。つまんない人生、つまんない連中だってね。」
本当に何も無い無表情の李那はまるで別人のようだ。
俺の中で勝手に李那の印象が作られてる。
いつも笑顔っていう俺のエゴが。
「特にALSになってからは思ったよね。
なんのために生きてるんだろうってさ。」
李那は冷たい眼差しで俺を見据える。
こんな冷たい瞳知らない。
怖い。
「…まあ、笑顔無くすとこんな感じの顔になるってこと、わかった?」
ふわっと李那が元の笑顔で笑う。
「…李那、もう1つ言いたいことあるんだ。」
「…?」
今しか言えない。
今だけ、李那を俺にください、裕さん。

「俺、李那の事好きだ。」

ストレートに気持ちをぶつける。
「…そう、だったの…」
「付き合ってほしいなんて言わない。
だけどさ、これからも今まで通り仲良くしてくれないか?」
「勿論だよ。」
李那は俺の前に立ってぽんと肩を叩いた。
「李那が辛い時に相談に乗れるような相手…利用してもいい。
俺をそばに置いてくれ。」
「…わかったよ。だから泣かないでよ。」
李那は自分の制服のブラウスで俺の顔を拭いた。
それまで俺は気づかなかった。
自分が泣いていることに。
【更科蒼空side END】

【中矢裕side】
…良かったな、蒼空…
気持ち伝えれて…
これで俺と李那が付き合ってなかったらまた変わってたのかな…
「…お待たせー
2人の分もちゃんと買ってきたよー」
「おかえり〜わあっ♪
みかんジュース♪」
蒼空にはコーラを買ってきた。
何となく飲んでるところを見たことがある気がするから…
ーヒュルルルルルルル…
ードオン!!
空を見ると打ち上げ花火が始まっていた。
綺麗な、花火。
隣にいる李那の横顔も綺麗だ。
「…また、見れたらいいなあ」
李那が寂しそうに呟く。
…ALSになった患者、特に若い人は呼吸困難で死ぬケースが多い。
この病気の理解を早く世界に伝えたい。