…本当に怖いこと…?
李那が怖いことって…
「り…」
「さあ、辛気臭い話は終わりっ!遊ぶぞ、蒼空!」
「…」
本当に聞きたいことが聞けずじまいだ。

“なんで李那はそんなにいつも笑顔でいられるの?”

…なんであいつは辛いのにずっと笑顔でいられるんだ…
不思議だ。
ほんとに、死ぬの?
ねぇ、李那。
君の笑顔はいつまで見れるかな?
「李那、射的あるぞ」
「なぬっ?!やらなきゃ!」
李那は俺を振り返り笑顔で射的に向かおうとした。
「ほら!みんな行くよ!」
海澪や柊さん、裕さんや俺をよぶ李那。
みんなが来るまで待ってる李那。
その姿が綺麗で思わず心にグッときた。
だから俺は迷わずカメラのシャッターを押した。
…李那、ずっと笑顔でいなくてもいいのに…
「よっ、李那。海澪」
「夕彩さん!」
「お久しぶりです!」
…誰?
次から次へと知らない人が…
「李那と裕と海澪は分かるけど、その2人誰。
美少女と男。」
「こっちは海澪の彼氏の柊秀一で、こっちが…
アリスです。」
…李那あああ…
見たまんまじゃねえか!
「どうも!柊秀一って言います!
吉野高校陸上部です。」
「五十棲夕彩って言うんだ、宜しくな。
元テニス部だ。
海澪は私の後輩。」
「あ、そうだったんすか…」
海澪の先輩か…
「んで、こっちは?」
夕彩さんが俺を指さして李那に問う。
「こいつはアリスって言うの。」
「へぇ、アリスねえ…」
「くくくっ…」
「…ふっ…くくっ…」
夕彩さんも李那も肩を震わして笑ってる。
「…アリス…くくくっ…」
夕彩さんは俺を見て震えて笑ってる。
お腹抱えてる。
「なあ、アリス、お前、ちびだな。」
「…知ってますよ。」
「男だな。」
俺を喋らすためにわざと怒らすようなことを…
ほんとに李那の周りにはこういうのしかいないんだから…
【更科蒼空side END】

【如月李那side】
無事に文化祭も終わり、今は後夜祭真っ盛り。
私は裕くんと海澪と柊、蒼空と夕彩さんで屋上で眺めていた。
もちろん全員制服に着替えてから。
「…楽しかったなあ〜」
私はまだ余韻に浸っているためぼーっとした顔をしていると思う。
「…李那、私、秀一と先に帰るね…?」
「そう?わかった、気をつけて。」
海澪は柊と仲良く腕を組んで帰っていった。
「そんじゃあ私も帰るかな。
李那、楽しかったよ。またな。」
夕彩さんもヒラヒラと手を振って車のキーを片手に帰っていった。
「…」
「おっと、俺、喉乾いたからジュース買ってくるわ。」
…裕くん、さっきお茶飲んでたよね?
全くもう…
…さてと…
「蒼空」
「…」
「なんか私に言いたいことあるわけ?」
最近蒼空からの視線がうるさいんだよね。
なんか言いたそうにしてるのも知ってた。
「…あの、さ…
なんで、李那はいつも笑顔でいられるんだ…?」
蒼空からの質問は驚きも全くない私にとっては耳にたこができるくらい聞いた質問だった。
「…言ってなかったっけ?」
「聞いてたよ。
死ぬまで笑顔でいたいって言うのは…」
「それが答えじゃん」
「…無理して笑わなくてもいいんじゃないか?」
…蒼空は私に仏頂面でいろとでも言いたいのか?
「…無理、か…たしかにしてる時もあるかな…
笑ってるのがかったるくなってくる時もある。」
あーあ…
まさか蒼空に見破られるとは。
【如月李那side END】

【更科蒼空side】
1度天を仰いだ李那。
元に戻った時の李那の顔はゾッとするくらい無表情だった。