「あ、如月さーん!」
「ん?」
後ろから李那を呼ぶ声。
衣装係の女達だ。
「これ、お礼。」
「え、2本もくれるの?!」
…なるほど。
李那はジュースで釣られてノリノリだったってわけか。
みかんジュース。
好きだねぇ、こいつも。
「あ、海澪ちゃーん!」
「秀一!」
…えーと、誰だっけ。
「何してたの、柊。」
李那とも顔見知りってことは陸上関係か。
「迷子になってた!え、このアリス可愛い!」
李那がニヤッと笑ってこちらを見る。
「アリス可愛いって、良かったね、アリス。」
…くそう。
からかってやがる。
「どうも。アリスです。」
くそっ!開き直ってやる!
「……
…蒼空くんやんな?」
おお!やっと気づいてくれた!
「似合ってるよ、アリス。」
…李那とグルかよ。
【更科蒼空side END】

【中矢裕side】
蒼空の奴、みんなからおもちゃにされてるな。
流石だわ。
「蒼空、なにやってんの、もう…」
李那が呆れ返った目で蒼空を見る。
蒼空はいじけて俺らに背を向けていた。
「…置いてくよ〜」
李那は溜息をつきながら蒼空に向かって歩いていく。
自然と離された手。李那は蒼空に1発蹴りを入れた。
「ほら行くよ。ご飯」
「おー…」
自然と蒼空の腕を引っ張っている李那。
「行こっ」
「おう。」
李那と蒼空のあとをおう俺。
俺の後ろには海澪ちゃんと柊。
2人を待つために立ち止まった俺に柊が笑う。
「…中矢…お前、ヤキモチ妬いてるだろ?」
ニヤッと笑って柊は李那達の後を追った。
俺も深い意味は考えずそのままみんなのあとを追った。

「ーお腹パンパン…」
「同じく…」
計画的に食べない人…
李那と柊と海澪ちゃん。
計画的に食べる人は俺と蒼空。
目の前でズーンと沈んでる3人を前に蒼空の目線は大分冷たい。
というか、呆れ返ってる。
「今からの予定は?」
「後夜祭までないよ」
李那は顔を上げてげっそり。
疲れきってる。
「よし、じゃあ回ってみようか、他のクラスも。」
「だね、そうしよう。」
李那はキラキラした目で俺を見る。
「…ハイハイ、お化け屋敷な。」
…小さな頃からお化け屋敷が大好きな李那。
変なやつって言われてたけど、仕方ない。
ホラー映画でもケタケタ笑うタイプだからこいつは。
…思い出し笑いが怖いだけで。