「読むよ?」
李那は封筒から取り出して便箋を開いた。
「うわ、綺麗な文字。」
今どき…
「読むよ?
『世莉香へ。
こうして手紙になるのを許して欲しい。
そしてこれ以降、俺とお前の関係はキッパリ終わらせてもらう。
はっきりいって迷惑だったんだよ。
俺は今、彼女を作って暮らしている。
お前ともただの幼なじみなだけで付き合ってたわけでもなんでもない。
全てお前の妄想だ。
お前と曖昧な関係だったから今回手紙で言わせてもらう。
俺とお前は終わったんだよ。始まってもねぇけどな。
他のやつ見つけて幸せになれよ(なれるものなら)。
じゃあな。
将吾』
……だって。」
あ、やっぱりそうだったんだ。
…しかも付き合ってないけどとか…
「…ふっ…」
「李那?」
「あはははははは!!」
李那…壊れた?
「やっぱりねぇ、そんなこったろうと思ってたよー!!
最っ高、傑作じゃん!あはは!」
李那が壊れた…
「やっぱりあいつ、話盛りすぎなんだよ。
それも妄想って!やっば!ツボった!」
「李那、それ本人に聞かれたらやばいから…」
裕くんが苦笑しながら李那を制しているけど、李那はまだ笑い続ける。
「聞かれてたとしたら李那、リンチ合うかもよ。」
「あいつに私をリンチしてくれるような友達いるの?」
…李那、さっきから正論言いすぎてて怖い。
確かに、井上には中学の時から友達と呼べるような関係の人がいなかった。
上から目線なのもあってみんなから嫌われていたから。
「これ絶対明日からやばいだろ、アイツ。」
…李那の目が本気だ。
「アイツがこの手紙読んだ瞬間から雰囲気変わったのは感じてたけど、明日からやばそうだねえー。」
確かに、雰囲気は変わった。
怖かった。
【古川海澪side END】

【更科蒼空side】
こんなに爆笑してる李那を見るのは初めてだった。
だからこそ笑い終わったあとの李那が怖かった。
あのとき以来かも知れない。
教室で李那がキレた時。
「…明日、か…どうなるんだろうか…」
俺はベットに横になりながら不安を覚えた。
明日から井上世莉香がどうなるのか。
ーブーッ…
…また、だ…
よく来る井上からのLINE。
全て無視してあるけど、どうするべきか…
『蒼空くん!あのね、文化祭の事だけど…』
大概が読まなくても自己完結してくれているから反応はしない。
おかげで通知が鬱陶しくなってきた。
LINE自体の通知を切る。
李那からの連絡も分からなくなるが、井上からの呪縛から逃れたかった。