「もう、お姉ちゃん泣きすぎだから!」
「だってぇ〜…」
ーグラッ…
うっ…
また、これだ。
最近ふとした瞬間に力が抜ける。
今までは普通だったのに最近特に増えた。
「お姉ちゃん?!」
「李那!」
今の私は椅子から落ちそうなくらいになってる。
だけど、ギリギリ保って座ってる。
今にも落ちそう。
…床冷たいし、落ちたくない…
「裕くん、ヘルプミー。」
「最初から言えや。」
裕くんはなんだかんだ言ってもちゃんと助けてくれる。
だから裕くんは優しいんだ。
「背もたれある椅子借りてくるよ。」
裕くんは私を助け起こしてから廊下に向かった。
幸いこの病院は私の通っている病院だ。
椅子もすんなり借りれるだろう。
裕くんも看護師さんたちに顔覚えられてるし。
こういう時に便利なんだよなあこの病気。
でもさ、電車とかで一応、身体障害者マーク付けてるのにさ、譲ってくれない奴らもいるんだよなあ…
世の中の人にこの病気について色々知ってもらいたい。
だから私は地元で活動を続ける。
ALSについて。
チラシを配ったり実体験を語ったり。
色々してるうちになんか虚しくなってきてる。
「…お姉ちゃん?」
でも、美那みたいに私を信じてくれてる人もいるから頑張れる。
「李那、椅子借りてきた。」
私は恵まれてる方だと思う。
毒舌だけど優しい彼氏がいて。
心配してくれる家族がいて。
馬鹿なことを言い合って笑い合える大切な友達がいて。
恵まれてる。
「ありがとう裕くん。」
それなのに。
なんでだろう。
なんでこんなに私は死にたいって考えてしまうんだろう。
…全てはこの病気のせいだ。
「ねえ裕くん。」
「なんだ?」
「介護士になってもALSの研究するの?」
「するよ。」
裕くんは私と目を合わせてはっきり言う。
「李那のために。
ALSの患者のために。」
「そっか。原因解明出来たらいいね。」
「おう。頑張る。」
早く解明されたらいい。
ALSで苦しむ人を見たくない。
…それくらい、苦しんでるもん、私。
人前では笑顔でいても。
笑ってても。
やっぱり苦しいよ。
なんで?なんで?って。
叫びたくなるくらい辛いよ。