その明るい笑顔のお姉ちゃんを私も家族も疑わなかったんだ。
お姉ちゃんの異変に気づいたのはお姉ちゃんが死ぬ一週間前。
まだ私の病気のことも分からず、いつものように部活の帰りにお見舞いに行った時だった。
「…もうやだ、死にたい…」
あの時のお姉ちゃんの顔はなんにもなかった。
笑顔も、何も。
感情が一切なかったあの顔。
「…早く死にたい…」
お姉ちゃんの顔は泣いていて。
初めてお姉ちゃんがあんな何も無い顔して泣くから…
私は思わず病室に入るのを躊躇ってしまったんだ。
…あの時もし私が病室のドアを開けて入っていたら。
お姉ちゃんは自殺なんてしなかったんじゃないのか。
今でもぐるぐる頭の中を回っている。
「…李那、1人で思い込むな。」
「だって、あの時私が病室に入っていたらお姉ちゃんは…」
「違う!李那のせいじゃない!」
あの時開けてお姉ちゃんを止めていれば今でもお姉ちゃんは生きてたかもしれない。
また違った未来が待っていたかもしれない…
「李那のせいじゃない!」
「私が!お姉ちゃんを殺したようなもんだよ?!」
「落ち着け!李那!」
あの時、なんで私は病室に入らなかったんだろう。
どうして、お姉ちゃんを止めなかったんだろう。
止めてたら何か違っていたのでは…
「李那!李那が止めなくても止めてても奈那さんは自殺してたんだ!」
「…えっ…」
「今まで黙っててごめん。
だけど奈那さんは李那が止めても止めなくても自殺してたんだ!」
なんで、裕くんが知ってるの…?
「1度だけ、奈那さんに呼ばれて病室に行ったことがあるんだ。」
お姉ちゃんが、裕くんを…?
「確か、奈那さんが亡くなる3日前。」
お姉ちゃん…
「裕くんにだけ、伝えておくね。
私を止めないで、…わたしは死ぬから。
李那の事お願い…。
…そう言って亡くなったんだ!」
短い、お姉ちゃんの遺言。