…裕くん、ありがとう。
裕くんが呼吸って言ってくれなかったら走れなかったよ。
「気持ちよかったよ、教えてくれてありがとうね、裕くん!」
…あぁ、やっぱりダメだ。
この人じゃないと嫌だ。
「李那…」
「裕くん!!」
私は裕くんに抱きついた。
「今更だけど…やっぱり裕くんのことが大好き〜…」
泣いてしまった。
泣いてても頭は割と冷静なんだなあ…
恥ずかしい、でも泣きたい。
「…李那…」
「…もう、遅い?」
「遅くない、おかえり!李那!」
「うわあああ!」
私は大号泣した…
裕くんの所に戻れたことに対しても。
大会出ても今度は走れたことに対しても。
勿論、優勝できたことに対しても。

裕くんは私に前よりもっと優しくなった。
それは多分、私の体の自由が無くなってきているからだと思う。
大会のあとのことはよく覚えてない。
ずっと裕くんにくっついていたことは覚えてるけど。
「李那、やっとそばにもどれた…」
「裕くん…」
「もう離れたいって言っても離さないからな。」
裕くんのお家に泊まった私。
裕くんの腕の中でまた笑えあえる日が来るなんて…
「裕くん、私の体動かなくなるんだよ…?」
「それでも構わない。俺は李那と居たいんだ。
動かなくなってもいい。俺が介護するから。」
裕くん、ありがとう…
「俺の夢、聞いてくれる?」
「…?」
「俺の夢は介護士になって李那にとってなくてはならない存在になること。」
裕くんは昔から介護士目指してたよね…
「なら。私の夢も聞いてくれる?」
「勿論」
「裕くんにとって1番大事な存在になりたい。」
「もはやそれ夢じゃないじゃん」
裕くんは笑う。
確かにもう夢じゃないかも。
でも裕くんのそばにいたい。
一番近くに。
「裕くん、ひどいことばかり言っててごめんね。謝ってなかったよね。」
「もういいよ。あれは俺を思ってのことだろ?」
「うん」
「ならいいよ。」
裕くんは優しい。
私が何を言っても最終的に折れてくれたり私の意見を最優先で聞いてくれる。
優しすぎる人なんだ。
でも裕くん走ってた裕くんで私に対してだけの素の姿がある。
それは霊狼と共に動く“優狼”。
同じように族潰ししたり、カツアゲを取り締まったりする一匹狼なヤンキーだ。