話すことは無い。
確かにそうだ。
俺にだって話すことは何一つとしてない。
…なのに、なんでだ?
どうして俺は李那を追いかけているんだ?
もう、嫌いなはずだろ?
「…はあっ…はあっ…」
「…はあ………はあ…」
「やっと…捕まえた…ふぅ…」
学校から大分離れた河原。
その河原を更に越えた山にある神社。
その神社で俺は李那を捕まえた。
「…何よ。話すことは何も無いよ。」
「違う。謝りたかっただけだ。
話に来たんじゃない。頭を下げにきただけ。」
俺は李那に向き直り、頭を下げた。
「ごめん。あの時李那の事何も考えずに怒ったりして。」
「…」
「許してくれとは言わない。
分かるから…あれは俺を思っての事だもんな。」
「…」
「もう、…終わりなのか?俺と李那…」
「…っ…」
「未練とか、ないか?」
未練ないわけねぇよな?
だって、そのネックレス。
俺が上げたものだよな?
「…未練、あるよ。
だけど、もう終わり。」
俺の目をしっかり見た李那。
…終わった。
俺の初恋。
隣の家の可愛い女の子。
普通に恋に落ちた。
その初恋ももう終わり…
「李那…やり直せないのか?」
「…ダメ。今やり直したら別れられなくなる。」
別れなきゃ、ダメなのか?
「…お前を追いつめてるもの、なんだ?」
「私が死んだら、中矢くんはどうするの?」
“中矢くん”
李那に初めて言われた呼び方。
「俺は…ずっと好きでいるよ。
そしてまた…李那を好きにならせてみせる。」
また好きになったら、その時にまた俺の名前を呼んでほしい。
俺は李那の耳元でそう囁くと先に神社から出ていった。
「中矢くん!」
「…?」
階段の上。
李那が俺を見て声を張り上げる。
「私中矢くんの事好きになりたくない…」
李那の目から。
涙が流れた。
「好きになったらまた、別れる時悲しくなる…」
李那は一生懸命俺に伝える。
その目は、俺が好きだと言っていた。
「李那。
俺のことが好きになってからでいい。
また全部受け止めるから名前で呼べる日が来たら、呼んでくれ。」
「…中矢くん…」
俺は今度こそ李那に背を向けて学校まで戻った。
また好きになってくれたら。
絶対離さない。
死ぬまでずっと好きでいるから。
戻ってきてくれ、俺の腕の中に。
【中矢裕side END】

【如月李那side】
好きになってからでいい。って…
今でもまだ好きなのに…どうすれば…
「…李那?」
「何?蒼空」
「裕さんと、あれから話し合った?」
蒼空はなんだかんだいって私と裕くんの事を心配している。