そのまま私は隣の私の家に入る。
「ただいまー!」
「おかえり希望。…と叶夢くん!」
お母さんが出迎えてくれた。
お母さんは家に居るからねッ。
「お母さん、夕飯叶夢くんも一緒にいい?」
お母さんも叶夢くんも“は?”とでも言いたげな顔をしている。
「…うちはいいけど、叶夢は?」
「僕も、今日は1人なので…」
「だったら叶夢くんも一緒に食べよ!ね?」
…いつも1人なんて寂しいじゃん…
叶夢くんが意地悪ならそのまま放置するけど優しいもん…
1人になんてさせたくないよ!
【柊希望side END】

【中矢叶夢side】
…久しぶりに海澪おばさんのご馳走を頂いた。
相変わらず美味しい。
「叶夢。
美味しい?」
「はい。」
おばさん腕を奮ってくれたのかな…
唐揚げ、ポテトサラダ。
お味噌汁。白米。
僕のせいで気を使わせてしまった…
「唐揚げ熱いから気をつけてねー」
「あっつ!」
「あはは。だから言ったのに〜」
僕が口にほりこんでから言ったよね、おばさん。
…確信犯だ…
「叶夢くん、ポテトサラダ食べて!美味しいから!」
「焦らなくてもご飯は逃げないよ、希望。」
希望がせっせせっせとご飯を器に入れてくれるから…
「ほら、希望も食べないと。
勉強して疲れたでしょ?」
「うん!」
「慣れないことしたあとはちゃんと食べないと。」
「なあに、希望勉強してたの?」
「うん!叶夢くんに教えて貰ってた!」
「そう!良かったね!」
海澪おばさんは優しく希望の頭を撫でる。
僕はその様子をぼんやり眺める。
…いつだって、僕は…
我慢してた。
お母さんがいない寂しさを埋めるには読書。
読書をして現実逃避して、お父さんに心配させないようにしてた。
本当はもっとお父さんと遊んでいたかった。
風邪をひいたら無理してでも休んでくれて看病してくれたお父さん。
…かっこよくて優しいお父さん。
「おばさん、ご馳走様でした。
美味しかったです。」
僕は自分の使っていたお箸と皿を流し台へ持っていき、洗う。
「あら、いいのよ。」
「いえ、ご馳走になりましたから。」
「ありがとう。」
これくらい慣れてる。
お父さんは最悪帰ってきたらカップ麺食べるだろう。
そろそろ帰ってお風呂の用意でもしようか…
「おばさん、希望ありがとう。
そろそろ御暇しますね。」
僕は鍵と携帯を持って外へ出る。
「希望、またLINEするね。」
僕は希望の頭をぽん、と撫でて自分の家に入った。