「…こんな、ビデオだったんだな。」
「小学校に入学した時もこんなだった。」
お父さんは目を真っ赤に充血させて、それでもなくまい、と上を向いた。
「…お母さんは僕の幸せを考えてくれていたんだね。」
「いつも、叶夢をおもっていたよ。」
…でも、お母さんは自分のことは考えてない。
僕やお父さんを重視して、自分のことはあまり大切にしていない…
そんな気がしたのは…僕だけ?
「…お父さん…」
「言いたいことはわかるよ。
李那は…あ、すまん、お母さんは…
いつも周りが先だった。自分より周りを優先させていてな…」
…お母さん…
…ありがとう。
【中矢叶夢side END】

【中矢裕side】
疲れきって眠ってしまった叶夢。
お風呂はもう入ったし、まあいっか。
叶夢は部屋で寝てるし、俺も、寝るか。
ーカラカラ…
「…李那…」
…叶夢も大きくなって、家の事も色々やってくれている。
李那みたいに色々こなしてくれてる。
感謝でいっぱいだよ。
…もう、安心してるかな。
安らかに眠って欲しいんだけど。
李那から見た俺、変われたかな…
まあ、再婚してない時点でダメかな。
でももう、李那以上に大切な存在なんて出来ないから、許して欲しい。
俺は生涯、李那だけを愛します。
【中矢裕side END】

【更科蒼空side】
…久しぶりに叶夢見たけど、かなり大きくなってたな…
身長もかなり高くなってた。
「…重い…」
…頭いてぇ…
確か酔いつぶれて…
送ってもらったんだっけ…?
「どいて、慎吾くん…」
俺の上に乗っている慎吾くんをどかして俺はベランダへ向かう。
外の空気を吸うと中に戻る。
「…蒼空?どうした?」
「なんもないよ。空気吸ってた。」
「…そうか。」
慎吾くんは今にも寝そうだ。
俺は慎吾くんに肩を貸して部屋まで運ぶ。
「…よっ…と…」
俺のが早く酔い冷めたな…
「…蒼空…」
…寝言?
寝言で俺の名前出るとか…
「…しゅきだよ…」
…え、…
とりあえず聞かなかったふりでもしとくか…
自分の部屋に戻って横になる。
慎吾くんとシェアハウス初めてかなり経つ。
お互い彼女なんていなくてラクーに過ごしてる。
慎吾くん、あの容姿だからモテるのに。
…寝言とはいえ、告白されたみたいだったな…
保育士の仕事も楽しい。
…けど、なんかな…
足りないんだよな…
「…アイツがな…足りねえんだよな…」
李那が、足りないんだ…
あの毒舌さと明るさが欲しい。