お母さんも、お父さんを愛していたんだね。
「俺が、認めたライバルだったなあ…」
「おじさんが…」
「叶夢が小さい頃もよく遊んでもらってたんだぞ。
あいつもよく遊びに来てたからなあ高校のとき。」
…高校の時?
…あれ?僕、いつ生まれたんだ?
「僕、お母さんが何歳の時に産まれたの?」
「…お父さんとお母さんが高校2年生の時かな。
お母さんはその時にはもう病気持ってたから、辞めてたけど。」
…そうか。
僕、お母さんの病気の名前、知らない。
「お母さんの…病気の名前って…?」
「後で調べてみるといいよ。
筋萎縮性側索硬化症という病気なんだ。」
…長い…
調べてみたい気持ちもある。
…怖い…
どんな恐ろしい病気なのか…
「…そう、だったんだ…
最後、お母さんはどんな思いで…」
「…もう、叶夢にも見せていいかな。」
お父さんは仏壇の抽斗から便箋を取り出す。
3枚のDVDと共に保管されていた。
僕はゆっくり便箋を開く。
…お母さんの字…
病気のせいなのか、読みにくいところもあったけど、お母さんなりに一生懸命書いたのがわかる。
僕の幸せのために色々考えてくれていたのがわかる。
あのDVDのことも…
僕のことを考えてくれていたのがわかる。
「お父さん…」
「ん?」
「1枚目のDVD…みたい…」
「…いいだろう…」
リビングに移動してDVDを再生。
『叶夢、裕くん。こんにちは。』
…お母さんだ…
『これ見てるってことは新しいお母さんがきたのかな…?それとも再婚せずに叶夢がお願いして見てるのかな?』
…未来予知みたいなこともするんだ。
『どちらにしろ、私はそこに居ないんだよね。
まあ、それは置いといて。
叶夢、大きくなったね。
本当は直接言いたかったよ?
けど、直接言えない。それを許して欲しい…』
…お母さん…
本当に僕のことを考えてくれていたんだね…
『叶夢。お母さんのことを忘れてもいいよ。
けど、ちゃんと幸せになってね。』
テレビの中のお母さんは泣いていて…
お母さんに言われなくてもお母さんの事を忘れるなんて絶対にしない。
『叶夢には幸せになって欲しいから。
お母さんのことで悩まないで。
…忘れたくないって言ってくれるのなら、遺影の私を見てね。
お母さんは叶夢が大好きです。
だから、…っ…
空から…っ…ちゃんと見てるからね…』
綺麗に、泣くんだな…
『…裕くん、いるかはわからないけど新しいお母さん。
叶夢をよろしくお願いします。
叶夢、大好きだよ。』
…お母さん…
頬に温かいものが流れてくる。
…涙…
お母さんが死んだあの時以来だ…
…忘れないよ。
僕は…お母さん大好きだから…