難病が教えてくれたこと


最後まで、笑顔で、穏やかだった彼女。
来世ではもっと長く生きて欲しい。

「ー…ママ、お空に行っちゃった…」
「…そうだね…でもママの事だから、今でもちゃんと見守ってくれているよ。」
「うん。僕もママのこと絶対に忘れない!」
遺影の中の李那。
優しく微笑んでいる李那。
…きっと、見守っててくれてるよな。
ありがとう。愛しの李那。
【中矢裕side END】

【古川海澪side】
「ほら、希望!行くよー」
「待って待って!」
10歳になった希望。
隣の家には13歳になった叶夢。
小学生と中学生になった。
叶夢が希望を迎えに来てくれて一緒に行っている。
「じゃあ行ってきます。」
「いってらっしゃい。」
叶夢はあんまり顔が変わらない。
…李那の顔に本当に似ている。
「…はーあ…つまんねえなあー…」
「だからってなんであんたはウチにいるの?蒼空」
…本当に入り浸るようになったな。
「だって慎吾くんの鼾うるさいんだもん。」
黒田先輩と蒼空は何故かシェアハウスを始めた。
…なんであの組み合わせなんだろうかと常に疑問だ。
「慎吾くん、うるさいの。
普段あんまり喋んないくせに喋るとうるさい。」
…いるよねえそういうの。
「んで、お前はいつまでいる気だ?更科。」
「…んー、もう少し。」
「さっきからそれしか聞いてねえけど。」
たまたま仕事が休みの秀一。
蒼空も休みなのかダラダラしてる。
…お前はウチの居候か?
秀一の部屋着を着て、机の腕にだらーんとしながらくつろぐ蒼空。
「海澪ー…」
「なに?」
「こいつ、外に放り出していい?」
「…逆に留守番?」
「いいね。」
今日は出かける日なの。
だから、早く帰るかウチで留守番させるか…
「蒼空、留守番する?
それとも帰る?」
「…帰る。
俺も用あるから。」
…どうしても行きたいの。
それくらい大事な用事だから。
「…よし、帰る用意できた。」
…そりゃあ着替えるだけだもんね…
いつものラフスタイルでうちから出ていった蒼空。
「…じゃあ行こうか。」
「そうだね。行こう。」
私と秀一は出かける用意をして家を出た。
花屋さんに寄る。
そのまま墓地へ。
…今日は李那の命日。
李那の命日は絶対に晴れる。
春の穏やかな日に亡くなった。
…大切な親友の命日は毎年欠かさずここに来る。
「…李那。久しぶりだね…」
李那のいるお墓の前で手を合わせる。
秀一も隣で手を合わせる。
…李那っていう存在がこんなに大きいなんて…