難病が教えてくれたこと


「ー…おはよう、叶夢。」
「おはよう…おじさん…」
叶夢と俺。
同じくらいに目が覚めてしまった。
腕時計を見ると朝の6時半。
…いつもの癖が出てしまった。
「着替える?」
「…うん。」
叶夢は布団から出ると服に着替える。
「トイレ…」
俺はその間にトイレに向かう。
リビングに入ると海澪が朝の用意をしていた。
「あ、おはよう蒼空。」
「おはょ。海澪」
「早いね?」
いつも出勤する時はこの時間に起きるから…
「お弁当?」
「うん、秀一会社行くから。」
…秀一今日仕事なんだ。
…土曜だよな?
俺は休みだからいいや…
「おじさん…」
「どうした?」
「…お腹減った…」
「ふふ、叶夢おはよう。朝ごはん作るね。
何がいい?」
叶夢のお腹が盛大に鳴った。
余程お腹が空いているんだろう。
「…たまごサンド…」
「分かった。ちょっとまっててね。」
海澪はパンを出して三角に切る。
何故かゆで卵が冷蔵庫の中から出てきて…
潰された。
そのままマヨネーズで混ぜ混ぜ…
パンに挟んで完成。
「はい、出来たよ。」
「…美味しそう。」
叶夢は目をキラキラさせてたまごサンドを見つめる。
「食べていい?」
「いいよ。」
「おじさん…」
叶夢は寂しそうに俺を見る。
「ん。蒼空、コーヒー。」
「サンキュ。」
俺は海澪からコーヒーをもらって叶夢の前に座った。
…俺にも子どもがいたらこんな感じなのかな…
「美味しい!」
「良かった」
叶夢はニコニコして、たまごサンドを頬張る。
…李那にそっくりな顔だ。
綺麗な二重の目に長いまつげ。
髪はサラサラでキリッとした眉毛。
鼻も普通に高くて…
李那に本当にそっくりだ。
裕さんに似ているところは口の形。
キュッと引き締まったいい形をしている。
「…ママ…」
やっぱり母親が恋しいのか…
…裕さん、腹くくってください。
ーピンポーン…
「はーい。」
海澪が玄関に向かう。
中に入ってきたのかリビングの扉が開いた。
「あ、おはようございます、裕さん。」
「おはよう蒼空。」
「パパ!」
「ん。おはよう叶夢。」
叶夢は椅子から降りて父親のところに走る。
裕さんは叶夢をぎゅっと抱きしめて頭を撫でる。
「ねえパパ、ママは?」
「…」
答えられるわけがないだろう。
叶夢は李那大好きだから…
「海澪ちゃん。蒼空。ありがとう。
1日預かってくれて。」
「いいんだよ。私たちの仲じゃない。」
「俺も楽しかったですし、構いませんよ。」
裕さんの目は真っ赤で。
昨日沢山泣いたんだ、というのが分かる。