『裕君へ。
今、これを読んでるということは私は恐らくいません。
いるかもしれないけどもう裕くんとは話せていないと思います。
叶夢が生まれて幸せだった。
けど幸せすぎて忘れてたよ。
病気の存在を。
だから最近、呼吸器を外して過ごしていた。
いつ、その時が終わってもいいように。
叶夢がもう少し大きくなるまで生きていたかったんだけど、ごめんね。
身体の、限界が来て…
私にはもう耐えられなかった。
ごめんなさい。
もし、叶夢に新しいお母さんを作ってくれるなら、…ううん、作って欲しい。
3つのビデオを遺していきます。
1つは私の次のお母さんが来たら。
2つ目は叶夢が小学校に入学したら。
3つ目は叶夢に大切な人が出来たら。
分かるように番号と説明の付箋を貼っておきました。』
確かに、手紙の下に置いてあったDVDを見るとわかり易く付箋が貼ってある。
『ごめん、裕くん。
叶夢のために、このお願いを聞いて。
私が死んだら。新しいお母さんを作ってあげて。
もし裕くんが私を忘れたくなかったら、いつもの笑ってる私を思い出して欲しい。』
…思い出しても、キミはいつも笑ってる。
…でも、ごめんな。
そのお願いだけは聞けないよ。
「…は、はっ…」
叶夢のことを考えてのことだろうけど、…そのお願いだけは聞けない。
…ごめん、李那…
今だけ、泣かせて欲しい。
…こんなに唐突にいなくなるなんて…
本当は寝てるだけなんじゃないかって、思ってしまう。
…頭ではわかってるんだよ…
李那は…もう…
息を引き取っている、ということを…
『叶夢が大きくなった姿も見たかった。
裕くんの隣でももっと笑っていたかった。
ごめんね。気持ちとは裏腹に…
自然にみんなの中で逝きたかったから…
あの形でお別れになってしまいました。
…こんな遺書にしたくなかったんだけど…
きっと裕くんは今、この手紙を読んで、泣いていると思います。
書いてて悲しくなるので、遺書、ではなく手紙、にしました。
ごめんね。もっとそばにいたかった。
ずっと…見守っています。
叶夢の成長と、裕くんの気持ちの前進を。
ありがとう。
幸せになってね。
如月(中矢)李那』
…頬に温かいものが流れた。
…俺の、涙だ。
ごめん、李那、今だけ、泣かせて…
明日には叶夢にも伝えられるようにするから…
明日、叶夢に伝える時も泣いてしまう気がするよ…
ダメだな。こんなのじゃいつまでも見守っててもらわなくちゃならない。
明日、叶夢と一緒に李那のそばに行くから。
…その時に、最期のお別れをしよう、李那…
【中矢裕side END】