「元気だよ〜久しぶりだね?」
『そうそう、それでさ、入学式なんだけど、何時だっけ?』
…まさか忘れたのかな?
ちょっと天然で可愛い…
「13時だよ〜
後で詳細書いてある紙写メ撮って送るね。」
『ほんと?ありがとー!』
「うん、今すぐは無理なんだけど…」
『いいよいいよ!入学式までだったら!
じゃあまたねー!』
最後まで元気よく電話を切った未来ちゃん。
マイペースというかなんというか…
とりあえずいい子!うん!
「ごめんごめん、蒼空食べた?」
「うん、今食べてる。
食欲あるみたいだから大丈夫じゃない?
あとはビタミン取って寝てたら直るでしょ。」
淡々と話してるからもう心配はしてないのか…
「と思ってみかん買ってきた〜
あとリンゴとかフルーツ家から持ってきたよ。」
…みかんは…ねぇ?
「「「李那が食べたかっただけだ…」」」
裕くん蒼空、私の声が被る。
「まあそうだけど。」
認めるんかい!
李那らしいや。
「てことで海澪、リンゴ剥いてきて。」
「…リンゴ?」
…私、リンゴ剥いたことないんだけど…
「…出来ない?」
「うん。」
「じゃあ私が行く。連れてって。」
私は李那を抱える。
…前より軽くなってる…
食べてるのかな…
そのまま抱えて下まで降りる。
ダイニングの椅子を借りて李那を降ろす。
…もうほんとに下半身動かないんだな…
「…前まで片足だけだったんだけどね…」
リンゴを剥きながら李那は静かに話し出す。
視線はリンゴのままだ。
「あれから動けなくなってさ、今となっては車椅子なしじゃ生活できない。
叶夢も少し動けるようになってきたし、とりあえずはいいかなって思ってたんだけど、やっぱりダメだなあ…」
「…どうして?」
「今日みたいに自由に来れなくなるかもしれない。」
包丁を置いてリンゴを皿に置く。
…リンゴ…うさぎの形してる…
「まだ動きたいのになあ…」
…爪楊枝をグサッと遠慮なくうさぎに刺していく。
…うさぎ…

「ーんじゃ、お邪魔しましたー」
「蒼空、あったかくして寝るんだぞ。」
「わかってまーす…来てくれてありがとな」
ニッコリ笑った蒼空は私たちを見送る。
裕くんは車椅子を押してゆっくり歩く。
「あれ?」
「どうしたの、李那」
李那と裕くんの家が見えるあたりまで来た時。
李那が首を伸ばして自分の家をガン見した。
「あれ誰の車?」
「…?」
裕くんも不思議そうな顔をして家に近づく。
「じゃあ海澪、またね。
また来てね。」
「うん。じゃあね…」
私は2人を見送って帰路に着く。
…あ、秀一だ。
「秀一!」
「ん、お帰り。いたら来るかなって思ってきた。」
…私が来なかったらどうするつもりだったのか…
馬鹿な秀一にくすくす笑いながら秀一に近付く。
自然とお互い手を取って夕暮れの道を歩いて家まで帰った。
【古川海澪side END】

【如月李那side】
…誰の車かなって思って近づいた。
後ろにも前にも初心者マーク。
黒い普通車。