裕さんの焦りが俺にも分かる。
だって幼馴染でしょ?友達歴長かったでしょ?そして何より大切な彼女でしょ…?
そりゃ焦りも出てくるよな。
俺にとっても好きな女の子だから分かるよ。
「…李那…」
「裕さん、大丈夫ですよ…李那ならきっと…」
あいつかなりしぶといから。
とまでは言わなかった。
だってそんなの裕さんが1番よくわかってるもん。
【更科蒼空side END】

【中矢裕side】
李那が入院して1週間。
俺は毎日のようにお見舞いに来ていた。
大好きなあの笑顔を見たいから。
今日こそ、ちゃんと起き上がれるかな…
「よお、李那」
「あ、裕くん!」
心は元気なんだけどな…
体がついていかなくなってるんだもんな…
「体、どう?」
「元気!」
聞くと毎日同じことしか言わない李那。
空元気なんだろう。
見てるこっちが泣きたくなってくる。
…まだ李那の泣いた顔見たことないかも。
悔し涙とかは見たことあるけど、自分のことで悲しんだ涙は見たことがない。
「元気!なのはいいけどよ…早く動けるようになれよ。」
「口は動くのに体が動かないの!」
それ、笑顔で言うことじゃないから…
「李那、今は辛いかもしれないけどお前にはまだ生きてほしい。」
「…」
笑顔のまま、李那が固まった。
「俺、李那としたいこといっぱいあるから。」
「…」
「旅行とか、お祭りとか、毎年やってるけど、まだまだ李那としたい。」
「…」
「俺、まだ学生だし、李那も学生だけど、将来のことは考えてる。
だから、…まだ死なないでくれ…」
「…」
李那が顔を伏せた。
長い前髪で覆われた顔は見えない。
李那は前髪が長い。
中3の時までパッツンだったのに伸ばし始めた。
李那は元々右目が悪い。
だんだん見えなくなっていって、今はもう、見えていない。
なんで、李那ばっかりこんな目に合わなきゃいけないんだ…
こんないい子なのに…
「裕くん、私まだ死なないよ?」
「…」
「私だってまだ裕くんとしたいこと沢山あるんだから。」
李那の顔にはうっすら笑顔があった。
「花火もしたいし、浴衣デートとかしたいし、裕くんとまだまだ笑い合いたい。」
「…」
「まだ手も繋いでいたいのに、体がゆうこと聞かない…」
李那は泣きそうな顔をして自分の体を見つめた。