『ありがとうございます。』
写真撮るの上手いな、裕さん。
全て綺麗に撮ってある。
「…」
…李那との思い出にこの写真を保存することを許して欲しい。
「…っ…」
…なんだよ、俺…
まだまだダメじゃん…
そろそろ諦めついたと思ったのに…
「…ご、…めんっ」
李那はあんなにバッサリ俺をフッてくれたのに。
俺は全く前に進むことが出来ない…
【更科蒼空side END】

【中矢裕side】
…これで全部かな。
蒼空、あの写真気に入ってくれたかな…
構図が良くてつい撮ってしまった写真。
モデルの顔がいいからなのか。凄い綺麗に撮れた。
「兄貴。」
「どした。」
「どうしよ…」
ノックもなしに入ってくる弟を怒ることが出来ない。
風雅は全身傷だらけだった。
「なんだなんだ?!何があった?!」
「…」
泣くことしかしない風雅に途方にくれる俺。
…一体何があったのか。
「あっ、裕くん。」
「美那ちゃん」
後ろからひょこっと出てきた美那ちゃんも少し傷を負ってる。
「何があったの?」
「…なんなんだろうね。」
…は?
何があったって言うんだ…?
風雅と美那ちゃんは普通に陸上の練習に行っていたんだ。
大会の選抜リレーに2人がいつも選ばれることが他のメンバーにとって気に入らなかったらしい。
…それで出れないように、とボコボコにされてしまったらしい。
美那ちゃんを守るために風雅は自ら壁になっていた、と聞いた。
「兄貴…っ」
「…」
肩を少し押さえただけで顔を歪ませる風雅。
「…」
少しずつ、痛みの箇所を知るために抑える場所をずらしていく。
…左腕…
がひどいな。
「風雅、痛いかも…」
「えっ……いっ!」
…うーん、…左腕全部かな?
肩から全てって感じがする。
「病院行こうか。」
「今から?!」
「うん。美那ちゃんはかすり傷だね?
李那に手当してもらおうか。」
俺は立ち上がって上着を羽織る。
財布と携帯を持って家を出た。
美那ちゃんを家に送り届ける。
「風雅、待ってて。」
「分かった。」
外に風雅を置いて俺は美那ちゃんを送る。
「おかえり。美那。」
「ただいま、お姉ちゃん」
「李那、美那ちゃん怪我してるから手当してあげてくれる?」
「了解。」
叶夢を床に置いて李那は救急箱を取りに行く。
「じゃあ李那、頼んだよ。」
「分かった。」
俺は如月家を出て風雅と共に病院へ行く。
隣をひょこひょこ歩く風雅。
大きくはなったけど俺のが身長高い。
俺は風雅をおんぶした。
「うわっ?!なんだよ、自分で歩くよ!!」
「何言ってるんだ、痛い時くらい甘えろ。
一応これでも現役陸上選手だ。」