「李那先輩。
今更ですけど、中学の時はすみませんでした!」
…なんかあったっけ…?
ううん…?
「なんのこと?」
「…私、が裕先輩と抱き合ってた時の…ことです。」
「あぁ〜」
その事か。
もうすっかり忘れてた。
「確かに裕先輩のこと、好きでした。
でも、李那先輩を傷つけてしまったと実感した時に私、泣いてしまったんです。」
…ん?
なんで桜が泣いてしまうの?
私を傷つけてなんで泣いちゃったの…?
「…私も…李那先輩を尊敬して、憧れてたんです。」
…あー。
椿はわかりやすく憧れオーラ出てたけど、まさか桜まで…
椿は本当にわかりやすく競技まで同じにしてたもんね。
短距離と高飛び。
桜は分かりにくいよ。
裕くんと同じ幅跳びと私と同じ短距離だもん。
あの時の2代トップは私達だったからねえ。
いろんな人が憧れに持ってたことも知ってる。
「今更ですけど、本当にごめんなさい。」
再び頭を下げる桜。
「…」
どう、すればいいんだろう。
あの時のこと言われても…ねえ?
「もうとっくに時効だよ?」
ふふっと笑いながら私は桜の顔をのぞき込む。
「へ?」
間抜けな顔をしながら桜は頭をあげる。
「私はもう、気にしてないの。気にしたところでもう時効。」
「…え、あの…」
私の隣で椿がくすくす笑う。
「…ふふっ…
李那先輩らしいですね。」
「でも憧れにしてたのは本当です。」
それだけで充分。
2人とも根はいい子なんだもん。
私と裕くんを目標にしてたこともちゃんと分かってる。
だって…
あんなきつい練習メニューを1年生からやるんだよ?
根性がなきゃ出来ないでしょ。
「あの練習メニューを2年や3年とやってたんだよ?
1年生からやってたのはあなた達だけ。」
「それだけ俺らを尊敬して目標にしてたって事だろ?それだけ凄いってことだよ。」
裕くんも私の後ろから優しく声をかける。
「…桜は今まで後悔していました。
姉である私からも謝ります。
あの時は本当にすみませんでした。」
…ちょ、椿まで何やってるの。
「もういいから。顔上げてよ。私悪者みたいじゃん」
ちょっと怒ると2人は顔を上げる。
私を尊敬してくれた。
それが聞けただけで私は充分だもん。
「今はほかに尊敬する人いるでしょ?」
「「何言ってるんですか、李那先輩と裕先輩に決まってるじゃないですか。」」
…さすが双子だね。
同じセリフを一言一句違いなく言ったよ。