蒼空の気持ちは嬉しいけど、やっぱり答えることは出来ない。
叶夢と裕くんを裏切るなんて出来ない。
裕くんを恨んだ時もあったよ。
目のせいで陸上選手の夢を諦めたのも事実。
だけど、罪悪感からかもしれないけど、裕くんは私に謝って、罪を償ってくれてる。
隣で支えてくれてる。
…そんな人を裏切る訳にはいかないんだ。
だから、ごめん、蒼空…
「…本当にごめんなさい、蒼空…」
私だってこんな言葉言いたくない。
実際裕くんと別れていた間、私を慰めてくれていた蒼空にはきゅんとしたから。
だけど、…私には裕くんしか居ない。
私にとって大事な人は裕くんしか居ないの。
「…分かってるよ。李那がどれくらい裕さんのことを好きか。
だけど、好きなものは仕方ない…」
「…」
「李那にはさ、幸せになって欲しいから。俺が茶々入れちゃダメなんだ。
だから、勝手に好きでいるからさ。」
「…」
「…ごめん、嘘。本当は俺が幸せにしたかったんだ。
次の恋に行けるまで、李那のこと、好きでいさせてくれないか…まだ諦められそうにない…」
かける言葉が見つからないって、こういう時に使うべきだと思う。
蒼空の顔は涙でぐしゃぐしゃで…
ぎこちなく笑ってる。
でも私には蒼空の涙を拭く資格はないから。
…ごめん、蒼空。
「…こういうことを言うのは私の我儘なのかな。」
「…ん?」
「…蒼空とは友達でいたい。
今すぐに友達に戻るのは難しいかもしれないけど、私は蒼空と仲良くしていたいの。」
本当に私は我儘だと思う。
私のことが好きな蒼空にとって、この私の我儘は聞けないだろう。
でも私は…蒼空とはずっと友達でいたい。
「…」
俯いてしまった蒼空。
どんな顔をしているのか分からない。
「…蒼空…」
私が蒼空の立場だったら…やっぱり嫌かもしれない。
好きな人にフラれてすぐ友達に戻れるほど神経図太くない。
それでも私は…蒼空と仲良く笑っていたい。
「…李那がそれを望んでくれるなら喜んで。」
ぎこちなく笑った蒼空は真っ赤な目をしていて…
見てて耐えられなくなりそうだ。
それでも私が泣くわけにいかない。
…いかない、のに…
「李那…ごめん、泣かせたかったわけじゃないんだ。ただ、本心を伝えようと…思って…」
…分かるよ。その気持ち。
分かるけど…
蒼空にはずっと支えてもらっていたし、隣で馬鹿げた話もしてくれた。
そんな蒼空の優しさを知ってるから余計に辛いんだ。
…1番辛いのは蒼空なのに…
「李那を泣かせたかった訳では無いんだ…
混乱したよな、ごめんな、李那…」
こんな時でも私の心配をしてくれて頭を撫でてくれる蒼空。
感謝と同時に罪悪感もある。