難病が教えてくれたこと

「…おお、美味そう。」
「簡単なレシピ作っておきました。良かったら作ってみてくださいね。」
「助かるよ。裕。頂きます。」
味は、普通だと思うが…
どうだろう。
「うん、美味い。」
「良かったです。」
「明日は帰れ。子ども、見にいけ。」
正直、今すぐにでも帰りたい。
産んでくれた子ども、今すぐ見たい。
「分かりました。何かあれば力になります。」
「これ、俺の連絡先だ。一応登録しとけ。」
ニカッと笑って良斗さんは携帯を差し出す。
登録すると携帯を仕舞い、洗い物を始める。
「もう寝ろ。もう遅いからな。明日は駅まで送るよ。」
入れたり尽くせりだな…
「そんな気にすんな。お前がいなかったら兄貴は今頃森で死んでたかもしれねぇ。」
「…」
「お前が森も見に行くって言った時は正直いねぇだろって思ったが、見に行って正解だったみたいだな。
俺1人だったら絶対に行ってないかもしれねぇ。」
「…念の為でしたよ。」
「…だな。よし、寝るか。おやすみ。」
「おやすみなさい。」
借りた和室に行き、横になる。
李那からLINEが来ていた。
『無理しちゃダメだからね。気をつけてね。』
『分かった。明日帰るよ。』
『うん。待ってる。』
子ども、どんな顔してるかな…
李那に似てたら可愛いだろうな…
俺に似てたら最悪だ。
…性別はどっちだろうか。
早く知りたい。
ーコンコン
「?はい。」
「裕、起きてるか?
俺明日用あるからお前の地元まで行くんだが、ついでに乗ってけ。」
「え、いいんですか?」
「いいよ、序だ。病院の先生に謝っとこうと思ってな。」
礼儀正しい人だな。
「じゃあおやすみ。」
静かに襖を締めた良斗さん。
…俺も、寝るか。

「ーおう、おはよう裕。」
「おはようございます。」
思いのほかぐっすり眠ってしまっていた。
携帯の目覚ましがなった時はほんとに携帯を壊してしまうかと思った。
…寝心地良かった。
「朝飯、食うか?」
「いつも食べないので大丈夫です、ありがとうございます。」
「俺もだよ。だったら出発するか。」
「はい。」
荷物を全てまとめ、忘れ物がないか確認する。
車の中では世間話で盛り上がった。
李那のことを話したり兄弟のことを話したり。
気づけばもう地元に帰ってきていた。
「いやあ、久しぶりに高速乗ったけど早いなあ〜」
「高速ですからね。」
俺も早く免許欲しいなあ〜
「ほら、見えてきたぞ。」
「ほんとだ、早い。」
「車停めるからちょいまちな。」
シートベルトを外し、バックで駐車場に車を停める良斗さん。
停め終わると荷物を持って車から降りた良斗さん。
俺の荷物…
何故か俺の分も持ってくれている。
「ん?入口に…」
「あ、李那…」
「彼女か。」
キョロキョロ周りを見回している李那。
「あっ裕くん!」
「ただいま李那。」
「おかえり!」
「動いて平気か?」
「今は平気♪」
…今はって…
うん、病室に連れていこう。
「病室戻ろうな。」
「うん。」
「良斗さん、来ます?」
「ん、行こうかな。」
1人で行ってもおそらく迷子になるだろう。
森の中でもこの人は迷子になったんだから。
方向音痴…なんだな。きっと。