李那、ごめんな。
全然気づけなくて。
授業中寝てるしかないように見えて色々考えていたんだな。
「…」
俺は全てを記録するために写真に収めた。
李那の本音が分かる。
やっぱり早く解放されたかったんだ。
李那の明るさにいつも本当は病気じゃないって思い込んでいた。
学校やめたのも病気のせいじゃないって思いたかったんだ。
「…くそっ」
ほんとに悔しさでどうにかなりそうだ。
裕さんは…多分この落書きに気づいていない。
まず、他クラスだから気づくはずがないんだ。
「蒼空?何してるの?」
後ろから海澪がひょこっと顔を出す。
「ああ、李那の席?」
「…の落書き。」
「ええ?落書き?」
海澪が李那の席をよく見る。
「…あっ…」
気づいたのか海澪の目には涙が…
「やだなあ…もう、泣かないって決めてたのに…」
へへっと笑っている海澪。
…俺も、もう泣かないって決めてる。
李那に馬鹿にされそうだから。
まだ、泣かない。
「もし、李那が死んだら、その時初めて泣こうって思ってたのに…」
多分海澪もこの落書きに気づけなかったことを悔やんでいるんだ。
海澪は高校のほぼ最初から李那と仲が良かった。
あとから俺とも仲良くなった感じだった。
付き合いは、海澪の方が長い。
「…もう…」
目を制服の袖でゴシゴシ擦る海澪。
その仕草に不満を漏らす李那はいない。
ー…ガラッ!
「蒼空!!」
突如俺らのクラスに飛び込んできた裕さん。
驚く俺と海澪。
「…あ、とりあえず、移動しよ。」
すっかり常連になっている俺と海澪。
陸上部の部室にお邪魔した。
なかなか綺麗に片付けてある部室。
あの臭い匂いも全くない。
裕さん曰く、李那が変に片付け、匂いもないように消臭剤を使っているからだそうだ。
「ごめんな、急に。」
そして毎度毎度俺と海澪に頭を下げる裕さん。
「何があったんですか?」
「李那の容態急変したとか…?!」
「いや、李那の声、出るようになったって聞いて嬉しくてつい…」
李那の事で一喜一憂する裕さん。
…ってそんなことより…
「李那、声出るようになったんですか?!」
「ああ。李那のお母さんから聞いたから間違いない。
多分ストレスが少し解消されたんだろう。」
ストレスもあるもんな。
…良かった。声、出るようになって…
「嬉しすぎて早く報告しないとって思ってたんだ。」
李那を通じて仲良くなった裕さん。
「で、さっき黒田先輩からスタ連来たんだけど。なんでだと思う?
あ、黒田先輩ってーのは俺の先輩なんだけど…」
…すみません知ってます。