「李那先輩がどうしてこんな難病にかかってるんですか?!」
「遺伝子の問題があるから…」
ALSがなんであるのかなんて俺が聞きたい。
なんで、李那なのか。
神様はこの子が欲しいのか?
まだ、やらねぇ。
まだ李那はあんたみたいなクソ神にはやらねえ。
「李那、先輩はずっと裕先輩が好きでしたよ。」
「椿?」
「1度だけ、先輩に遅くまで練習に付き合ってもらってた時があるんです。
その時聞きました。
“好きなもんはしょうがないじゃーん?
1度、好きになったら簡単に諦めつかないよ。
どこが好きなのかよく分からないけど、とりあえず好きなんだっ!”って可愛く笑ってました。」
椿は李那を見ながら涙を流している。
「私は、そんな李那先輩を見て思ったんです。
裕先輩との中を裂けるのは誰一人としていないなって。
李那先輩が大好きだから…」
椿は俺を見て微笑んだ。
「誰も付け入る隙はないんだって思い知らされました。」
「お姉ちゃんも、裕先輩好きだったんです。」
桜は椿の隣に立って涙ぐむ。
「私だって好きだった。
だけど、李那先輩を見てきたら分かるんです。」
泣いて泣いて、大粒の涙が床に落ちる。
「李那先輩じゃなかったら意地でも振り向いてもらってました。」
「李那先輩だから、私達は諦めることが出来たんです。」
2人で笑いあってまた、李那を見る。
「李那先輩、高校は違いましたけど、またご指導頂きたいです。
奇跡でも動くようになって欲しいと思ってます。」
椿はカバンから手紙を取り出した。
そっと、李那の枕元に置く。
桜も同じようにカバンから手紙を取り出し、同じように枕元に置いた。
「裕先輩、これは私たちの本音が書いてあります。
李那先輩が目覚めたら読んでもらってください。」
2人は一礼して病室から出て行った。
2人を慌てて追いかける俺。
「あのさっ…
李那が目覚めたらまた連絡するから…」
突然声をかけた俺に椿と桜は驚いた様子だったがニッコリ微笑んで大きく頷いた。
「「はいっ!連絡お待ちしてます!」」
最後には椿と桜は笑顔で帰って行った。
「あ、おかえり裕くん。」
李那の所に戻ると海澪ちゃんが出迎えてくれた。
「さっきの2人、秀一の後輩だ。」
…ああ、確か柊吉野高校だったな。
最近見かけないから存在忘れてたわ。
「確かそうだな。
あの2人は確か高飛びとリレーだったと思う。」
「そうそう、言ってた。」
柊か…
最近まともに会話してないな。
「また、陸上仲間で集まりてぇなあ…」
【中矢裕side END】

【古川海澪side】
「また、陸上仲間で集まりてぇなあ…」
ポツリと李那を見て呟いた言葉。
蒼空にはきっと聞こえてなかったと思う。
…秀一に連絡しとこう。
後で。
「じゃあ裕くん。私用あるから帰るね。」
「あ、ゴメンな遅くまで引き止めて。」
…遅くって、まだ、5時なんだけど…
真面目な性格してるんだね、裕くん。