勉強はやっぱり李那ですわ。
「…ふあ〜…」
おお、大きな欠伸。
ーブーッブーッ…
俺のポケットで携帯が震える。
「…?」
誰だこいつ。
…椿…?
とりあえず読んでみるか。
『こんにちは、先輩。
覚えてらっしゃるかは分からないんですが、陸上部の春川椿です。』
…春川…椿…?
誰だろう。女子陸上なら李那に聞いた方が早いか。
「李那…」
「…んー…なに?」
「春川椿って誰?」
サアッと李那の顔色が変わった。
「…なんで?」
「今、椿って子から連絡あったから。」
「…」
李那は考える。
暫く顔を伏せ、考える。
「…知らない。」
やっと、答えた。
けど、たぶん李那は知ってる。
顔が嫌がっていた。
【中矢裕side END】

【如月李那side】
春川、椿。
まさか今、その名前を聞くなんて思っていなかった。
私の、嫌な思い出。
裕くんが好きだった子。
…の姉。
その椿も好きだったんだけど、妹の方が好きだった。
そういう思い出がある。
裕くん目当てで陸上部に入ってた子達。
「李那?」
「なに」
「…知ってるんだろ。」
…はあ。
「そうだよ。私の後輩なの。」
「…中学時代の?」
「覚えてないの?
体育倉庫で抱き合った女の子。」
…そう。
体育倉庫で雨の日、抱き合ってた女の子がその妹の
春川桜。
裕くんは不可抗力だけど、桜は明らかに狙ってた。
「…あの子か。」
「正確にはその椿は桜の姉。」
「桜?」
「抱き合ってた子。」
桜はほんとに裕くんが好きだったから。
ーブーッ…
再び裕くんの携帯がなる。
「…」
裕くんは黙って私に携帯を手渡す。
隠す気は全くないようだ。
『いきなりで戸惑ってらっしゃると思います。
ですが、この間の大会で李那先輩を見かけたものですから連絡してみたんです。』
…あの大会か。
まさか、見られてたなんて。
『李那先輩、お元気ですか?
私は、妹とは違ってちゃんと先輩を尊敬していましたし、憧れてもいました。』
…確かに、椿は私の出した練習メニューを1日たりとも欠かすことは無かった。
「裕くん、返事してもいい?」
「おう。」
『こんにちは。李那です。
久しぶりだね、元気してた?』
椿からの返事はすぐに来た。
『李那先輩!嬉しいです!良かったら直接やり取りしたいです!』
『了解。私の携帯から送り直すね。』
裕くんの携帯から私の連絡先を送信。
椿と直接やり取りしに自分の携帯を手に取る。
ーピロン
すぐに椿から連絡がくる。
『李那先輩!お久しぶりです!』
『久しぶりだね〜』
椿はほんとに練習熱心だったもんなあ〜
『私染井高校落ちたのでワンランク下の吉野高校通ってるんです。
染井高校行きたかったです…』
あー、吉野高校通ってるのね。
『あー…』
『ところで李那先輩、また会えませんか?
色々お話したいことありますし純粋に会いたいです!憧れの先輩ですし!』
…とても素直な理由だねえ…
この子のこういうところ好きだなあ私。
桜と違うところはこの子は左利きという所。
桜は右利きだから。
あとはそうだなあ…確かこの子、メガネかけてた。
まじめちゃんだから。
顔は綺麗系…だったと思う。
桜はほんとに可愛かったから。