『今からそんなので大丈夫なの?』
今から緊張しててどうするのよ。全くもう。
喝入れてやらねば。
『…大丈夫だと思いたい。
李那が来てくれるなら大丈夫だと思う。』
ははーん…?
分かったぞ?
何がなんでも私をこさせようっていう魂胆だな?
見破ったぞ?
引っ張っててもこいっていうことね?
…そんな遠回しに言わなくても行くのに。
私だって楽しみなんだから。
『行くよ?
行くき満々なんだけど私。』
バレーに興味が無いわけじゃないんだから私だって。
『笑。
そうか。良かった。』
LINEだからってなんか上からなのがムカつくな。
『まあ行くからしっかりやりなよ。』
『了解。ちゃんと真面目にやるわ。』
…ん?
真面目にやってなかったのこいつ。
練習では感心したくらい上手いと思ったのに。
まあ、ちゃんと蒼空らしい結果さえ出たらいいんだよ。
ずっと加藤先輩に憧れてたもんね、蒼空。
蒼空らしくやったらいいんだよ。
私みたいに悔いさえ残さなかったらそれでいい。
私は…残ってるから。
誰にも言えない私の後悔。
今となってはもうやり直すことさえできない。
裕くんでさえ、この後悔に気づいてないと思う。
私の中だけの、後悔。

…もっと全力で走ればよかった。

もっとちゃんと楽しめばよかった。
【如月李那side END】

【中矢裕side】
俺の部屋で大人しく読書している李那。
恥ずかしながら俺はそんなに国語が得意ではない。
たまに読めない漢字が出てきてしまう。
そういう時に李那が必要だ。
あほそうに見えて頭いいから。
「ねえ、裕くん、今いい?」
「…ん?どした?」
「この本読んだから戻して欲しい…」
…なんかまた抱え込んで悩んでるんだな?
顔見りゃわかる。
また1人で抱え込もうとしてる。
「はい。次いる?」
「ううん、眠いからいい!ありがとう」
李那は大人しく本を読んでいる。
時たま目を擦っているから眠いのは本当だろう。
…まあ大人しく寝てくれるなら安心だわな。
…あれ。これなんて読むんだっけ。
裂傷。
…んー、なんて読むんだったか。
辞書引くより李那に聞いた方が早い。
「おーい、李那〜」
「何?」
「これなんて読むんだ?」
参考書をもって李那の元まで行く。
「れっしょう、だよ。皮膚が裂けてできた傷。」
「擦傷とはどう違うんだ?」
「んー、多分だけど、簡単に言えば擦り傷と切り傷じゃないの?」
…あー!
納得。
いやあ、流石李那。
分かりやすい説明をありがとう。