「まあ、頑張ったよな、柊にしては。」
俺も、頑張ったんだけどな。
『裕くんも頑張ったじゃん?
100番位から12位だよ?』
俺を褒めるのも忘れてはいない李那。
『裕くんだって頑張ったじゃない。』
「うん…」
『自信持っていいんだよ?』
「…うん…」
『この調子で頑張ろうね。』
李那は俺の扱いになれている。
頑張って、だと1人でやるみたいだから、頑張ろう、と言ってくれる。
仮に李那本人がやらなくても、頑張ろうと、俺の事を励ましてくれる。
だから、この子といると落ち着くんだ。
『ね?頑張ろうよ、この調子で成績キープすればいいところ行けるよ。』
いい所って…
俺はもう、決めたのに…
「俺は…」
『あのね、裕くんは私の介護しようとしてくれてるみたいだけど、よく考えて。
私の存在が、裕くんの邪魔したくないの。』

俺は別にそんなつもりじゃ…
「…ん。考えとくよ、ちゃんと。」
『それでいい。私のことは気にしなくていい。
裕くん自身の夢に向かって欲しいから。』
俺の夢か…
大して考えたこと無かったなあ…
それなのに、俺より俺の事を考えてくれる李那は優しい。
俺にとっての夢、か…
【中矢裕side END】

【更科蒼空side】
うん、なかなか順位上がった。
これであとやるべき事はバレーだ。
俺の、得意スポーツ。
今回の試合、出られることになったから。
頑張ろうと思う。
李那は…応援きてくれるんだろうか…
「蒼空、行くよ?」
「おう。
今日俺、部活あるから先行ってて。」
「分かった。」
このあとはただ帰るだけだ。
だったら久しぶりに部活に参加しよう。

「…こんにちはー」
「よう更科!久しぶりだな!」
「お久しぶりです、キャプテン。」
…久しぶりの俺にも悪態ひとつつかないキャプテン。
俺の尊敬する人だ。
「俺、今回の試合、更科と出られることが出来るから楽しみだよ。」
俺は基本この身長だから試合にすら出てない。
でも実力はある方だと思う。
「俺も、楽しみです。」
「更科友達増えたもんなあ〜
李那ちゃん?とか海澪ちゃん?とか中矢とか!」
…ピンポイントで名前をだすんじゃないっ
「そうですね…まあ、新しく出来た友達です。」
…俺らしくねぇなあ。
いつもはもっとクールなつもりだったんだけど…
試合には苦い思い出しかないからなあ。
あんまり出たくなかったんだ。
イケメンとかの背の高いヤツらが点数決めるとすっげえ黄色い歓声でキャーとか言うくせに俺が点数決めると…あー、うん、頑張れ〜みたいになるから…
なんか弟かなにかが点数決めましたみたいなそういう歓声。
だからあんまり試合には出たくなかったんだ。
だけど、今回の試合はキャプテン直々に指名が来たから。
出なくてはならない。
キャプテンの引退試合だから。
キャプテンが、もう引退してしまうから。
「更科、練習しようぜ。」
「そうですね!」
俺の過去まで丸ごと受け止めてくれた上で指名してくれた先輩。
何とか役に立てるように頑張りたい。
「…更科、上手いなあ…」
キャプテンの方が上手いのにこの人は自信が無い。
折角才能があるのに勿体ない…
自信持てばいいのに…