難病が教えてくれたこと

数学とかはおいといて…
国語だけでも点数取ってもらおう。
「あ、俺漢字ならできる!」
「わかったから黙ってやって。」
「…さーせん。」
海澪よくこんなアホとつきあってるよね。
尊敬しちゃうわ。
裕くんがこんなアホだったら私無理。

「ー…ううう…」
「なんだよ柊、不満か?」
「わかんねーんだよ〜」
「辞書引け。」
私は辞書を柊に向かって投げる。
柊の足に命中して柊は痛そうに足をさする。
まあ、辞書だから痛いだろうね。
辞書だもんね。
「いてぇな〜
未来の陸上選手にそんなことしていいのかよ〜」
…?
「…おいばかっ…」
慌てて裕くんが柊の口を押さえる。
でも、聞いてしまった。
もう、遅い。
「…陸上選手…?」
「んだよ〜、中矢そんななんで怒ってんだ?」
…こいつが?
…なんか、ムカつくんだけど。
【如月李那side END】

【中矢裕side】
「…ごめん、私外行く。」
李那が怒ってしまった。
こいつのせいだ。
柊。
無自覚なんだろうけど、李那を傷つけた。
「え?なんで?」
「柊…」
こいつはバカなのか?
「秀一…」
「え、なになに、海澪まで…」
…李那がどれだけ今傷ついているか…
「お前さ、その話流れてきたやつだろ。染井高校から。」
…俺、その話聞いたことあるから。
「あ、うんそう。染井高校から流れてきた話…」
「それ、元々は…」
…李那が貰う話だったんだよ…
だけど、病気が発覚して、できないから辞めたんだ。
李那は元々陸上選手になるのが夢だったのに…
「…もしかしてこれ、如月が貰う話だった…?」
このおバカは今やっと理解出来たらしい。
「そう。その話は元々李那が受けるはずだったんだ。
李那お前より早かっただろう?」
李那は柊より早い。
未来の陸上選手。
李那の諦めなけらばならなくなったその夢を柊が叶える。
李那にとって今、むかつく相手は他でもない柊だろう。
…自分の夢を奪ったやつ。
だけど、柊よりにくいものがある…
ALSだ。
そばで見てきてるからよく分かる。
李那はムカついても憎んだりしないタイプだ。
元々そういう優しい性格をしてるから。
「…柊」
今まで黙って聞いていた蒼空が静かな声で柊に話しかけた。
「なんだよ…更科まで…」
「後で李那に謝っときなよ。
李那、誰よりも陸上選手になりたかったんだから。世界一の、短距離選手に。」
「…」
「李那が叶えられない夢を柊が叶えるんだ。
軽々しく李那の前で陸上選手なんて言わないであげてよ。」
蒼空…
なんだかんだ李那の事よく見てくれてるよな。
「…わかった。」
やっと納得した様子の柊。
「じゃあ俺、李那呼んでくるわ。」
「呼ばなくてもいるっつの。」
ドアを開けようと手をかけると先に開いたドア。
李那が普通にお菓子をもって戻ってきていた。
「なんだよもー…普通にトイレいってお菓子取りに行ってただけなのに…」
「…あの…如月…」
「そんな深刻そうな顔すんなって。」
「あのー…」
「さぁさぁ勉強しよう。」
…敢えて柊からの謝罪は受けないってか。
「あの、如月…」
「何?」
「さっきは、その…」
「何?謝る気?
謝るんだったら世界一の陸上選手になってよ。
なれなかったらその時に謝罪聞くから。」
「…」
「あんたの夢は私の夢。
二人分叶えるんだと思って気合い入れなさいよ。
私の分まで頑張って。」