難病が教えてくれたこと

【如月李那side】
…ごめんね、裕くん…
サッカーの練習に託けて、1人になりたかっただけなの。
最近では少し動くだけで疲れてしまう。
この間なんて足捻っただけなのにずっと痛くて。
こんなに弱虫になった私を見せたくないの。
ーブーッ…ブーッ…
誰だろ?
こんな時間に…
茉希だ…
どうしたんだろう?
「もしもし?」
『あ、李那?私、茉希。』
「うん。どうしたの?」
『メール見た?』
…メールってことはLINEか。
待てよ待てよ…
私はイヤホンをはめて耳から携帯をはなす。
トークを開けると沙良からの写メ。
海澪が蒼空にちょっかいを出している瞬間の写メだ。
たぶん…首を掴もうとしたんだろう。
間一髪で蒼空が気づいて躱した…ってところか?
「今見たよ。」
『海澪が蒼空にちょっかいかけようとしてたの。
しかもその場面は井上世莉香も見てました。』
井上世莉香…
誰だっけ…?
『今、考えたでしょ。』
「…うーん…?あ、あいつか。」
腹、だっけ。
そんなあだ名つけた気がする。
そうそう、アイツだ。
蒼空のことが好きなやつ。
…まだ好きなのかな?
まだ好きだったら笑える。
だって最近の海澪の報告では蒼空のやつ、茉希にちょっかい出してるんだもん。
好きな人にしかしないようなことを茉希にしてるんだ、気があるんじゃないか?ふふっ…
「あいつも見てたのか。」
『そうそう。だから、めちゃくちゃ海澪のこと睨んでて吹きそうになった。』
「え、なにそれ私でも吹くわ。」
久しぶりの茉希の声。
話が止まらない。
こう考えると友達っていいもんだよな…
…なんだかんだ私は友達に恵まれてる。
優しくてたまに毒舌な彼氏と。
不器用で真っ直ぐな蒼空。
最近楽しそうな海澪。
天然の茉希。
…巨乳でむかつく沙良。
クラスのみんなも。
いつも思い出す。
やめた日のことも。
みんなの悲しそうな顔が思い出せる。
それくらい、私もホームシックなる、スクールシックになってしまっているのか。
…なんだスクールシックって…
『李那がいないから蒼空学校のいつも暇そうにしてるよ。』
『ちょ、何言ってるんだよ茉希。誰もそんなこと言ってない。』
『え?だって実際そうじゃん。』
…何?今一緒にいる感じ?
…デート?
『あ、悪いけどデートじゃないよ。みんなで遊びに行くだけだから。』
…茉希…
君はいつからそんなにエスパーのように鋭くなったんだ?
天然でアホのイメージしかなかったのに…
『てことで、とうちゃーく!』
…待って?今外から茉希の声聞こえたんだけど。気のせい?
「やっほー!李那!」
…ではなかったみたい。
しっかり、海澪と蒼空と沙良もいる。
ついでに秀一もいる。
…あいつはいらなかったのに。
あくまで海澪とセットですか。全く。
「久しぶりー」
「「「「「棒読みかい!」」」」」
…わお、綺麗なハモリ。
そんだけ揃ったんだもん、気持ちよかっただろうね…
「…いやあ、それにしてもほんとに久しぶりだのー」
「ばばあかよ。」
「うるせぇぞ、蒼空。」
少し蒼空を睨む。