翔くんはほんとに元気な男の子だ。
「如月さん…」
「はい、こんにちは。」
次に声をかけてきてくれたのは私を担当してくれてる医師。
「こんな所で黄昏てるの?」
「まあ、そんなところですね。」
「…何か、考えてた?」
何か、なんて。
そんなの沢山ありすぎてて分からない。
なんでこんな病気になったのか、とか。
なんで早く死ねないのか、とか。
なんでこんなに苦しい思いをしなきゃならないのか、とか。
色々ありすぎて頭がパンクしそうだ。
「裕くんのこととか?」
この医師はたまに天然だ。
…まあ、そういうのが人気の秘密なんだろうけどさ。
私にこの医者は合ってない。
マイナス思考でしか考えられないのに。
こんなにポジティブ思考の医者が当たるなんて。
つくづくついてないと思う。
「如月さん、まさか人生について考えてないよね?」
エスパーかよ、この医師。
「…そんなこと。」
「楽しいことを考えようよ。」
…楽しいことなんてない。
毎日裕くんが来てくれる、それだけだ。
他に楽しいことなんてない…
「翔くん、手術しても生きてる可能性は半分だよ。」
「…」
「その翔くんでさえ、あんなに明るいんだ。」
…死ぬことがどういうことか、分かってないだけじゃないの?
5歳児なんてそんなもんじゃないの?
「退院したら何したいの?」
…退院したら…
「…退院、より、左足が動くようになったら走りたい…」
「如月さん、陸上部だったもんね。」
まあ、もう学校も辞めちゃったけどね。
どこで走ろうか。
「退院したら学校行くの?」
…学校は退学しました。
「やめました。学校。」
だっていつも呼吸困難起こしたり動かなくなったり、そんなの嫌だもん。
学校のみんなと仲良くしたかったのに。
病気のせいで、そんなことも出来なくなってしまった。
「如月さん…」
「…」
「サンドイッチ食べる?」
…はい?
大丈夫か?この医師。
人が病気恨んでる隣で美味そうにサンドイッチ食ってやがる。
…とりあえず美味しそうだから遠慮なくもらう。
「美味しい?」
「うん。」
「そりゃあ僕の嫁さんが作ったやつだからね。」
嫁さんって…
この人、結婚してたんだ。
「如月さんだって裕くんと結婚するんでしょ?」
…何言ってるんだろう。
とりあえず他人のフリ。
「あ、シカト酷い。」
…サンドイッチ美味しいや。
きゅうりがはいってて。
…みかん食べたいなあ…