「変なこと考えてるんじゃないでしょうね?」
…さすがお母様。
私のことよく分かってらっしゃる。
「んーん、考えてないよ。」
お母さんは私をじっと見て来る。
…何もかも見抜かされてる気がする。
「あ、それより通信制の高校卒業したよ。」
「え?もう?」
「うん。」
つい最近入ったばかりなのにもう高校卒業してしまった。
やり始めるととことんやってしまうからね。私。
「そっか、良かったね。」
なんだかんだやり始めると直ぐに終わってしまうんだよね。
いい癖のような悪い癖のような…
正直自分でも複雑な気持ちだ。
「そっか。
なんだかんだ直ぐに終わらせちゃうもんね、李那は。」
まあ、ちゃっちゃっと終わらせたいのが私だしね。
あとに楽したいから。
で、集中してたら終わってしまってたってわけ。
「どうする?散歩行く?」
「ううん、いいよ。お母さんも疲れてるでしょ。
家で休んでて。」
私はお母さんを半追い出す形で病室から出した。
「…ごめん、お母さん…」
どうしても1人になりたかったの。
「…」
1人になった途端、虚無感に駆られる。
私は松葉杖を着いて病室から出る。
「あ、李那ねーちゃん!」
病室から出ると病院で仲良くなった5歳の男の子。
ガンで入院してる子。
「李那ねーちゃん、今日は体平気なの?」
「うん、翔くんは?」
「僕もね、げんきだよ!」
小児がんで入院してる翔くん。
手術はもうすぐらしい。
「僕、来週にしゅじゅつなんだ!
早く元気になりたいなあー!」
病院の中庭に移動して翔くんとベンチに座る。
森の中にいるみたいで気持ちいいんだ。
「翔くんがまず元気になったらやりたいこととかあるの?」
「ボクね、サッカーが好きなんだ!」
…てことはサッカーをしたいのか。
「いつも審判しか出来なかったから…」
私は…
なんとなくで生きててなんとなくで行動してる。
翔くんみたいにやりたいこととか何も無い。
「李那ねーちゃんは?」
「そうだなあ…
私の夢は声優なんだけどね?」
「アニメの声とかしてるお仕事?」
「そうそう。」
「すごい!」
…叶うわけのないゆめ。
このまま衰弱して死んでいくだけの私。
生きる気力すら見いだせない。
「李那ねーちゃん、“頑張ろうね!!”」
…頑張ろう、か…
私に頑張れるだろうか。
私の生きる意味。
多分、無い。
前まで死にたくないって思ってたのに今ではどうでもいい。
そのくらい、意気消沈してしまっているから。
「翔くん〜検査の時間だよ〜?」
看護師さんが翔くんを呼びに来る。
「はーい!今行きまーふ!」
ふざけた返事を返して翔くんは看護師さんのところまでダッシュする。
ほんとにガンなのかと疑ってしまうけど、紛れもなく、小児がんの患者だ。