…これは、致命的だと思うなあ…
「李那、これは?」
「化学かよ…」
正直いって私は化学がにがてだ。
元素記号しか分からない。
化学式とか言われても全然分からない。
「あぁ、それはこうするんだよ。」
何故か化学が大の得意な裕くんが沙良に教えに行く。
化学以外はほんとダメなのにね。
「あの、李那…ここは…?」
茉希が恐る恐るノートを持って私に聞きに来る。
「それは…歴史だね?」
「…うん。」
「歴史はほんとに暗記問題だから、覚えてるところを軸にその前後を知ったら楽だよ。」
「あっ、そっか。」
茉希は一生懸命ノートに歴史をまとめていく。
「李那、これってさ。」
「あ、うん、そう。」
海澪ってなんだかんだ頭いいのになんで勉強会なんか…
「あ、参加した理由、李那にあいたかったからだよ。ずっと会いたかったの。」
…なんて正直ものなんだ、海澪。
「それでうちで勉強しようってなったの?」
「そう。
そしたら勉強会っていう大儀名分できるからさ。」
…そういうことか…
なんだかんだ、私と会いたいって思ってくれてたんだね、皆。
「あ、沙良の場合はほんとにやばいからきたんだから。」
…そうみたいだね。
ーコンコン…
「李那、ただいま」
「おかえりお母さん。」
「誰か来てるの?」
「うん、友達。」
カチャッと開けて入ってきたお母さんはこの人数を見て驚きを隠せないようだ。
「あら…大人数ね…」
「お邪魔してます。」
「ゆっくりしていってね。」
お母さんはにっこり笑うと部屋から出ていった。
「待って、李那のお母さんめちゃくちゃ綺麗!」
沙良、うるさいよ。
「そう言えば李那、ずっとこれ、付けてるの?」
沙良のことはスルーして私は茉希の方を向いた。
茉希は自分の鼻を指差し、不思議そうに私を見る。
…あぁ、これか。
「これ?まあ、普段ならいいんだけど、いきなり呼吸困難になる時あるから。それの予防かな。」
「そうなんだ…
何か力になれる事あったら言ってねっ!」
茉希はふんすっ!と気合を入れる。
…いや、今気合を入れることが違う気がするけど…
「とりあえず今は、勉強しようね。
テストいつからなの?」
「え?明日。」
……
…はい?
聞き間違いかな沙良ちゃん。
「明日…?」
「そう!明日は算数と化学!」
…算数とか言ってる時点で終わりだよね、沙良…
こんなにのんびりしてて大丈夫なのか…テストは…
「あの、明日からだよね?」
「うん。」
「真面目に勉強してるの、蒼空と海澪だけなんだけど?」
…百歩譲って茉希も。
「まあ、何とかなるでしょう!」
…こんなにのんびりしてるの、沙良くらいだと思うけど…
「明日からなんでしょ?もっと真面目にしてね?」
私は沙良に向かってにっこり笑顔を見せる。
「は、はい…」
沙良は私の顔を見て、いそいそと勉強を始めた。
…最初からすればいいのに。
【如月李那side END】

【更科蒼空side】
…李那、怒ってる。
久しぶりに会って勉強会。
李那は複雑そうな顔をして俺らに教えてくれてる。
「李那、すまん。」
「蒼空のせいじゃないから大丈夫」
久しぶりに会った李那は髪が伸びてて、知らない人みたいになってる。
雰囲気が…前と違って、何を考えているのか掴めない。