--Reversible--


静かに。咎めるように下から名前を呼ばれて、冗談だよ、と返す。



「分かったからお前は中入れ。危ねぇ」




地面に横たわる屍を指差して女に告げれば大人しく軽々と柵を乗り越えた。

入れ替わるように柵を乗り越え、死体を担ぐ。


おもてぇ。どうせなら柵を越える前にヤルように言えば良かった。



「ほら」




柵を利用して内側へと入れる。ぐったりと、力なく倒れるおじさん。






その横には飛び降り自殺に典型的な靴と遺言書。





機関に検閲されて明日には家族へと届くだろう。


「……リストラされたんだってさ」




「……」




「ま、不景気だからしかたねーよな。にしても、死ななくていーのに」





横たわる死体を見下ろし、動かない女に持っていた資料から得た情報を告げる。





その情報は、すでに女も得ていた物だが。





「どーすんの、それ」



普通の人間には目には見えないたったいま奪ったもの。

目を凝らすようにして彼女を見れば寿命が貰った分、増えていることが確認できた。



奪った寿命の使い方は様々だ。自分のものとするか他の人間に渡すか。…金のある物に高額に売り、札束にするか。





上には、奪った寿命の3分の2を渡さなければならない。残った3分の1…今回は8年か。どうするのか。聞いたのは、興味本位。


どう使っても自由だ。感覚で言えば、お年玉の使い道を聞くのと同じ。






「分からない」







「あっそ。俺が貰ってやってもいいけど。ってか少しはもらうべきだと思うけど」

こんな時間についてきてあげただけありがたいと思って欲しい。




夜が明ければ普通通り学校があるのだ。



それにも関わらずこうしてここまで付いてきたのに。




別についてきて欲しいと頼まれはしなかったけれど。帰って寝れるだろか。





今から寝た方が辛くなるな。



夜中の仕事の時は決まってその日の睡眠は諦めるが…


成長期な為やはり寝たい気持ちはある。





「いらないならいくらでも受け取りますよー」





後ろから声を掛けるも、無視。




「こら。無視すんな。桜夜 (サヤ)」



「…私の仕事だから」



報酬は自分のものと。そう言いたいのだろう。



振り返ることなく一直線にドアへと向かう背中に礼は無しかよ。と呟きながら、もう寝れねーな。とぼんやり思った。







【AM.7:46】






「ニュースをお知らせします。まず、今朝 ○○証券ビルの屋上でーー…」






「おっ、」








サラダを口に運んでいれば、耳に届いたアナウンサーの声。画面を見ずにまた一口口へと運べば、目の前の男は嬉しそうに声を漏らした後リモコンを手に取り音量を上げた。




今でも十分聞こえる音だったのに。



うるさい。寝不足でイライラしていることは自分が十分わかっている。

無言で睨めば。


「俺も条件は同じですー」






テレビへと視線を向けたまま、冬夜は口を尖らせて言う。






ついてきてくれなどと頼んでないのに。






勝手にきているだけなのに。