--Reversible--




「…なんで、それを」



苦しそうに、言葉を吐き出すが、もう遅い。


別に命を捨てようとするこの行為を止めようとも、説得させようと思い言っているわけでは無い。




「…だから、もったいない」


もう一度。ぐっと力を入れ抑える。女は、嗤う。


「だから、残りの命、私にちょーだい?」



「、な、なにを…!」



そこでやっと分かったのだろう。




小さいころから常識として教え込まれている”俺たち”の存在を。


でももう遅い。

…今まで死のうとしてた奴が、生に縋り付く姿はいつ見ても汚い。



生きたいと思い抗うのが本能であり、しょうがないことだけど。




やっぱり死にたくなかったんじゃないか。そう思わされるから。



それは、本人も同じだろう。





…だけど。

そのことを知った時にはもう遅い。




上に目をつけられたのが悪かった。


その時点で俺たちが来ても来なくても…どのみち助かる未来はなかったが。





最後の抵抗として、咄嗟に体を動かしてきるが、女ももう、最後の段階に入っていた。

だんだんと、抵抗していた手の、体の力が抜けて行くのが分かる。




無意味に空を掻きながら、女の腕を掴むが、それも力なく落ちていく。

あぁ、本当に。いつ見てもいい気分はしない。


「おやすみ、おじさん…いい夢を」

永遠に、いい夢を。


最後にまぁ黙っていれば美人な分類に余裕で入る女の姿で逝けたことは良かったんじゃないか。





…意識はもう朦朧としているだろうけど。

女がそばにしゃがみ込み、全ての機能が停止するのを確認する。



ようやく終わったか。


立ち上がって、側へと寄る。




――気づいているはずなのに。おじさんから目をはなさない女に声をかけた。



「……どんだけ時間かかってんだよ。10分も待ったんですけどー」




「早い方じゃない?」





「俺だったら30秒だった」




上から、女の背中に声を落とす。死ぬつもりがあるのか最後の確認をして、何がしたいのか。




毎回見てるけど、こいつがなぜそんな会話を交わすのか理解できない。




実際自分なら一言も交わすことなく、一瞬だ。




恐怖と言う感情すら抱かせず逝かせる。煩わしいことは苦手。



無駄に時間をかける意味が理解できない。





はぁー…とため息をつけば、下から女が強く見上げてきた。





「…いいからコレ、運ぶの手伝って」


当たり前のように言う女に、男は眉を寄せ渋る。


「上からだな?」





「そのために来てるんでしょ?」





「こっから落とした方が早くない?」





楽だし。と付け加える。




「……冬夜」