--Reversible--


遠くで、蝉の音が聞こえながら睡魔に引き寄せられて遠のいてくる意識。

眠ってしまいそうだとぼんやり思いながらも、隣の動く衣擦れの音に無理やり意識を浮上させる。



柱に持たれたまま、横の冬夜の顔を伺えば。

「何、」

黙ってこっちを見ていた冬夜が視線があって怪訝な顔をする。



「いや、怒んないのかなって」




助けられて、車でここまで来た時。部屋に投げ入れられた時に感じてたピリピリとした怒り。


優夜に咎められてきっと彼の説教はあれでおしまいだとは思ったけど。


冬夜にはこれからかなり長く怒られるか


凍てつくような怒りを向けられ


過ごす地獄の時間が待ってると思ってた。



長たちの事情聴取を受けながらこのあとに冬夜との地獄の時間が控えてると思うとかなり憂鬱だったのだけど。




今向けられてる視線や感じる態度からは

そんなものが見えなくて。


逆に心配になる。



「…めちゃくちゃ怒ってたよ」



「……だよね」

「男だったらぶん殴ってた」


「…ごめんなさい」

当たり前だ。冬夜たちまで危ない目に合わせてしまった。



発砲までされてるんだから。


撃たれてもおかしくなかった。

「…お前考えたことあるか?目の前で家族同然の仲間が組織に殺されそうになってんの」



「……」

「屋敷に着いたら絞ってやろうと思ってた。だけど、報告と聴取で時間が経ったお陰で鎮まってる」




多分。さっき。


ここについたばかり、

冬夜は殴りたい気持ちを抑えて私を投げ飛ばして優夜に預けたのだろう。




投げ飛ばされただけで済んで良かった。

「…ごめん」



きっと、逆でも今の冬夜と同じように思うだろうと桜夜は思う。