【CACE;3】
…今まで冬夜を怒らせたことはいっぱいあったけど、
こんな顔をさせたのはきっと初めてだと思った。
そのまま押し込められ発信した車は私たちの家ではなく組織本部へと到着した。
車内では一言も言葉はなかった。両隣の2人から放たれる刺し殺されるかのような空気に私も隣顔を見ることなんてできず、
下を向き走っている心臓を落ち着かせることで精一杯だった。
到着した見知った本部。泊まったことだって何度もあるからわかるけど、きっと今日は緊急事態だったからだ。
いつもは落とされてる照明が煌々とついていた。ぐいぐい引っ張られ、そのまま冬夜が一室を開け力任せに投げ入れられる。
体勢を崩しそのまま畳に倒れこむ。
「夕夜」
「はい」
パンッと怒りをぶつけた障子が壊れるのではないかと言うほど派手な音を立てて閉められる。
バタバタと閉められた向こうの廊下を走る何人もの足音。
転んだままの体制のまま、呆然と閉められた障子の見えもしない向こうを眺めるしかなかった。
「…桜夜さん」
静かに、私を呼ぶ声と、近づきしゃがむ音。
見上げれば、見慣れた顔が真っ直ぐにこっちを射抜いていて。
ーーパン!
軽い音と同時に
激しい痛みが両頬を襲った。
「……ゆう、や」
「分かりますね?」
どうして叩かれたのか。どうして怒っているのか。
「ごめん」
口からはありきたりだけどそんな言葉しか出てこなくて。今更ながらじわじわと遅れて溢れてくる感情。
置いていかれたのが悔しかった。
まだ自分が未熟と思われてるのが悔しかった。
死ぬかと思った、
ううん、一瞬、本当に死ぬしかないと思った。
撃たれててもおかしくなかった。ーーあの時、窓の向こうに2人がいなければ、
わたしは完全に捕まっていた。



