「またね、黒命さん」
微動だにしないオトコの指示に従い、窓の方へ向く。
「膝をつけ」
大人しく膝をつく。
ここで漸くコツコツと革靴の音が響き渡り、
男が近づいてきたのが気配でわかる。
ぐっ、と。
男が左の手首を掴む。
ーーー!
っ、
掴まれたのと、桜夜が振り向いたのは同時だった。
掴まれている男の手に力が入り左手が制限されるのを感じながら、
足はもう男めがけていた。
「う、」
小さく呻いて体勢を崩す男。
立ち位置が反転したと同時に男の右手が動いて咄嗟に体を動かす。
ーーーー!ーー!!!
消音器を付けてるので派手な音はしないけれど、それでも
威力のあるソレの音は耳を貫いて。心臓が跳ねる。
「ちょっと待って!僕に当たったらヤバイんだけど!」
桜夜に当てそびれたそれは少し先の床に撃ち込まれたようだ。
楽しそうに成り行きを傍観していた背後にいる男が焦った声を出す。
機関の男が今度こそは、と再び桜夜に照準を合わせるより先に
桜夜は男の手を捻っていた。
そして振りかざした腕と体の重力を利用しながら、窓めがけて走る。



