口を塞がれる。
こちらへ引こうとしたドアと
同じように私も後ろへと引かれる。油断した。
扉の向こうばかりに気を取られてこちらのほうの警戒ができていなかった。
…いつも冬夜と行動していたから。
こうした部分を冬夜は知らず知らずのうちに
カバーしていたのかもしれない。
それにしても。いくらこっちに気を取られていたといっても気配がしなかった。
少しの空気が動いただけでも気配くらいは感じ取れるはず。人のいない、夜の病院ならなおさら。
それなのに全く気付かなかった。
…ただものではない。
「…何をしているのかな?」
耳元へ近づけられた口から、
低い声が出された。
声音からまだ若い男と言うことが分かる。
と同時に口を塞いでいた手が離れ、
逃がさないようにか左の手首を握られる。
顔を見られるわけにはいかない。だが、相手の顔を見ようとしないのは逆に不振がられてしまう。
わずかに顔を動かして斜め上を見上げれば、
白衣を着た男が見えた。―――医者か。
「…ごめんなさい。ちょっと眠れなくて」
こうなった時の対処法は馬鹿ではない。
考えてある。そのまま俯いて弱々し声を出した。
「どうしてリハの階に?」
「散歩しようと思って」
「そう」
徘徊していた入院患者。それで逃げることができれば。
「部屋は何階?何科に入院してるの?」
連れて行くよ、と言われ首を振る。
「大丈夫です」
「何科?」
「…内科です。一人で帰れます」
少しずつ。
早くなってくる心臓を感じながら声を出す。
「……病室に、行かせられないかなぁー」
引いてくれない男。
間延びした声で雰囲気が変わる。
もう待てない。――動くか。
「―――ねぇ」
こちらへ引こうとしたドアと
同じように私も後ろへと引かれる。油断した。
扉の向こうばかりに気を取られてこちらのほうの警戒ができていなかった。
…いつも冬夜と行動していたから。
こうした部分を冬夜は知らず知らずのうちに
カバーしていたのかもしれない。
それにしても。いくらこっちに気を取られていたといっても気配がしなかった。
少しの空気が動いただけでも気配くらいは感じ取れるはず。人のいない、夜の病院ならなおさら。
それなのに全く気付かなかった。
…ただものではない。
「…何をしているのかな?」
耳元へ近づけられた口から、
低い声が出された。
声音からまだ若い男と言うことが分かる。
と同時に口を塞いでいた手が離れ、
逃がさないようにか左の手首を握られる。
顔を見られるわけにはいかない。だが、相手の顔を見ようとしないのは逆に不振がられてしまう。
わずかに顔を動かして斜め上を見上げれば、
白衣を着た男が見えた。―――医者か。
「…ごめんなさい。ちょっと眠れなくて」
こうなった時の対処法は馬鹿ではない。
考えてある。そのまま俯いて弱々し声を出した。
「どうしてリハの階に?」
「散歩しようと思って」
「そう」
徘徊していた入院患者。それで逃げることができれば。
「部屋は何階?何科に入院してるの?」
連れて行くよ、と言われ首を振る。
「大丈夫です」
「何科?」
「…内科です。一人で帰れます」
少しずつ。
早くなってくる心臓を感じながら声を出す。
「……病室に、行かせられないかなぁー」
引いてくれない男。
間延びした声で雰囲気が変わる。
もう待てない。――動くか。
「―――ねぇ」



