ひら、と右手を掲げた冬夜を横目で見る。




危険な――いつか自分の脅威になる因子は消しておく方がいいだろう。


実際、今は気付かなくてもいずれ気付いた時、



もしくは”機関”の人間がどこからか気付いて雇えば、同級生から敵になる。



自分の得意な分野で、それこそ機関の役に立てばそれなりにいい給料の元働ける。




それに機関もそれなりに護衛としてつくだろうから





そこらへんで働いて、いつ命を狙われるかの不安もない中で過ごせる。






一般人にしては素晴らしい待遇の元過ごせだろう。



――だけど、そうなればそうなった時だ。



今は、まだ。仕事でもない。


こんな所で何か起こせば立場が悪くなる。





機関がきて、全校生徒に調査が入るだろう。





冬夜だってそれは分かってるから冗談で言っていると分かってはいるけれど。




ふっと、冬夜の笑い声が耳を掠める。



「俺と桜夜が似てる…そうだろうな。境遇はかなり似ているし」




運の星が似ていれば、同じような運命を辿るのだろうか。






冬夜達のつながりを知らない池田が言っていることは当たってはいる。


「陰ってところもそうですね。僕たちは表には出られない」




陽と陰。ずっと、闇の中で生きるしかない。




今、こうして一般人にまぎれて生活しているのは仮の姿。





本当の姿では、こんな明るい場所で生きることなんてできない。






それは、自分たちが一番良くわかっている。



「…助っ人、どうするんですか?」




「いかないよ。必要以上に関わらない…そーだろ?」



吐き捨てるように言ってひらひらと手を振る冬夜。2年生の階についたので、廊下へと消えていく。





「…そーですね」




ぽつり。返した言葉は誰にも届かず落ちていく。


…陽は、落ちる。ここからは、僕たちの時間だ。