それはもう、その能力を見れば信じない者はいないというくらいに。




どんなに否定している人間であれど、目の当たりにすれば考えを改め直す。

まだ寿命は残っているにもかかわらず人生を終えたいと穏やかな死を望むものは残った命をその能力を持った人物へと託し、自分の血縁者や恵まれない子へと移した。


要らない者が能力者を通し必要とする者へ。

「有意義な寿命の活用」として能力者は使われていたのだ。それが、ずっと続いてきた能力者の在り方であった。




ーーそれまでは。その均衡が崩れたのはおよそ100年前。突如、その能力を持った者たちが突然暴動を起こし国中が大混乱に陥った。



それまで能力者は、国としても国民としても大切な存在でなければならないはずだった。



能力者がいるからこそ命の有効活用が行われ国が豊かになっていた。

最初こそ神のように崇められて大切に扱われて来たが、いつしか扱いは”人間以下”に。



有難いと思われていたものから、当たり前だと思われるものへ。





能力者たちは自由に力を使うことは許されず、国の下厳重に管理され。

いつからか「命を移し替える為の道具」としてしか扱って貰えなくなった。



国の指示の下、言われた人物から命を抜き取るのが当たり前。言われた人物へと、命を移し替えるのが当たり前。




決められた天からの授かりものとされた命は、儚く脆い。




命は良いことを行ったからと言って長く生きれる保障があるものではないし逆に大罪を犯しても善人よりもずっと長く生きれる人だっている。


そこに能力者の意思などはない。



決められた地域にしか住むことは許されず、基本的に監視され自由のない生活。

もっと大切に扱われてもいい存在だったはずなのに、いつしか国の奴隷扱い。


…そんな生活を強いられて、いつからか自由を求めるようになるのは当たり前のこと。



ある時、国のいいなりとして、ただただ寿命を移し替える道具とされていた能力者たちの中に待遇に不満を持った人間が、自由を求めだしたのだ。

ただ、能力の持たない一般人と同じような生活がしたい。




制限された生活ではなく、自由になりたい。ただ、好きなように生きていきたい。



それだけを望むために国へ対して反発を起こす人々が多い中、やはり自分の持つ能力で逆に国を支配しようと考える人物も出てきた。



彼らの思想はこうだ。人にはない能力を持つ我らこそが世界を動かしていくべきだ。と。

待遇や制度を変えてくれと素直に国に直訴するものがいる一方。



そんなものは無駄だと勝手に国の管理から抜け出し、まず自らの寿命を延ばすために指示されてもいないただの通りすがりの一般人達から次々に寿命を奪って行く人物が増えた。



暴走した能力者は、ただ命を抜き取る殺人鬼。



出会えば命を抜かれてしまう。そこに慈悲の心などは一切ない。


何の能力も持たない人物からすれば、能力者の暴走は、脅威。