「えっと…ほら、あの子です。あの、窓際でご飯を食べてる、ボブの…」
立ち上がって、優夜達越しに見える校舎を見て指をさす池田。
優夜と冬夜は振り返り、松本は同じように立ち上がって校舎を眺める。
「どこだよ」
「あの…1-Cの教室の」
なかなか見つけられない松本に池田が丁寧に教えている。
だが、冬夜と優夜はとうにその姿を視界にとらえている。
窓際で、4人で机を向い合せて食べている。
ここからは横側しか見えないけれど。
話は盛り上がっているのか周りの女子生徒は笑っているけれど、肝心の本人は弁当を見るように下を見ている。
「あぁ、あの子か。普通に可愛いじゃん」
「知ってました?」
池田は、じっと桜夜を見つめる2人に聞く。
「俺は今知ったけどなー…」と松本。
「ごめん、俺知らない子だわ」
フェンスに片手を絡めながら、顔だけ池田を向いた冬夜はへらっと笑う。
――上手だなぁ。
動揺、してたくせに。
「白石くんは?」
「…僕も初めて知りました。クラス、一緒になったこともないですしね」
池田を見てにっこりと笑う。自分も、人のことは言えないか、と自嘲しながら。
知ってるも何もない。彼女が今口に運んでいる弁当は自分が作ったものなのだから。
だけど、この中では、他人のふり。
それが暗黙の了解だ。
「そうですか…結構人気なんですけどね」
「へぇー…俺と同じような運持ってるんだからそうだろうけどね」
「おい、謙虚になれよ」
「ははっ、本音が出た」
ガシャン、と体制を戻す冬夜。