【AM.12:15】
「あ、冬夜くんだー」
「こんにちはー」
横をだるそうに歩きつつも声をかけられれば返すことを忘れない冬夜。
振りまく笑顔を見ながら、その外面の良さに優夜は感心する。
昼休みだけ限定で解放されている学園の屋上。
「いつもいつも悪いねー」
「そう思うなら少しは手伝ってくれると嬉しいんですけど」
少しも悪いとは思っていないだろう声音で弁当を広げる冬夜を横目に見ながら優夜も弁当を開ける。
「――冬夜!!見つけた!!」
「げっ、」
さぁゆっくりと昼食を採ろうか…
と思い箸を握った瞬間、2人の耳に届く嬉しそうな声。
反射的に顔を上げてそちらを向いた優夜。
自分を探していた人物に心当たりがあるのか
そのまま体を90度優夜の方へと向けて全然隠れていないのだが体を隠すように卵焼きを口へと運んだ冬夜。
優夜の視界に入ったのはたしか――
松本って言う人物だったなと優夜は名前を思い出す。
体育館で表彰されていたのを見たことがあるのだ。
近づいてきたその人物の胸につけてある名札で当たっていたことを確認して、見上げる。
その後ろに立っている人は優夜は心当たりがなく、2人と冬夜がどういう関係なのだろうかと眺める。
シューズの色から冬夜に声をかけた松本は冬夜と同じ2年生。
後ろにいる子は自分と同じ1年生ということは分かった。
「おまっ、授業が終わったら待っててくれって言っただろ!話があるからって!」
見下ろしながら言う松本に冬夜は相変わらず弁当を食べている。
「忘れてたわ。お腹空いてて」
「嘘つけ!さっき廊下で俺の顔見た瞬間に走って逃げたくせに」
「あ、気付いてた?気付く前に逃げれたと思ったんだけど」
「やっぱ覚えてたんじゃねーか!」
このやろ、と言う松本に、冬夜は相変わらず棒読みの謝罪をする。
どすん、と2人の前に座った松本は冬夜を真剣な表情で見つめた。
なんだ、と未だ話の行方が気になって弁当に手を付けることができない優夜。
冬夜はすでに半分食べ終わっているところだった。
もう少しゆっくり食べてもらいたい。
「…どうかしたんですか?」
話を聞く気のない冬夜。
できれば早く本題に入りさっさと立ち去ってほしいと思い、優夜はきっかけを作る。
その声に、目の前の松本がいきなり頭を下げた。
「頼む!土曜の試合、出てくれ!!!」
「やだ」
「……」
「頼む!」
「やだ」



